弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年10月25日

福島第一原発事故を検証する

社会

著者   桜井 淳 、 出版   日本評論社

 原子炉建屋の破壊度は尋常ではない。原子炉建屋は、きわめて堅牢につくられている。普通の商業ビルとちがって壁が厚く、鉄筋コンクリートで50センチはある。非常に強固・頑丈なもので、外部から小型ミサイルを撃ち込まれても大丈夫なくらいの強度をもたせている。めったなことでは側壁がすべてきれいに吹き飛ばされるなんて起きるはずがない。それが起きたのは、なぜか?
 周辺のあれだけ厚い壁を全部吹き飛ばす水素の量は、ざっと推定すると、炉心全体でジルカロイと水蒸気の反応が発生してほぼ炉心全体が溶融するような現象が起こらない限りありえない。
 政府首脳は事実を知っていたけれど、国民の様子を見ながら、徐々に情報を出していった。事実を全部いってしまうと社会がパニックに陥ってしまう。そう考えた、きわめて政治的な対応だった。
 日本の原発の第一の特徴は、一つの発電所敷地内に多くの原子炉が設置されていること。なるほど、そうですよね。だから、大きな地震にあうと、連鎖的な大事故に陥る危険性を内包している。
 福島第一原発の事故は天災ではなく、人災である、このように断言する。
 日本では、非常用ディーゼル発電機に絶対的な信頼性をおいている。そして、これを安全性のテーマにすることを意識的に回避してきた。
日本には、個々の機器の信頼性を評価できる専門家は存在するものの、発電所全体の配置や階層別機器などシステム全体の信頼を的確に評価できる専門家が一人もいない。安全審査では、そのような評価が欠落していた。安全審査が的確に実施されていたならば、福島第一原発の事故は、たとえ地震や津波の影響を受けても、発生しなかったと判断できる。福島第一原発の事故は安全審査の欠陥によってもたらされたもの。よって天災ではなく、人災である。
 軽水炉の設計寿命である40年をこえて運転している日本原電。敦賀原発1号機と関西電力・美浜原発1号機は、即刻、運転停止・廃炉にすべきである。
 さらに、1970年代に運転開始した第一世代の軽水炉は、すべて段階的に停止・廃炉にすべきである。まったく同感です。一刻も早く、子どもたちを守り、私たちみんなが安心して住める日本を回復しましょう。「今のところ放射能被害の心配はない」なんて大嘘ついて国民を欺し続けるのは即刻やめてほしいものです。
(2010年7月20日刊。1400円+税)

 このところ相次いで心が震えるほどの素晴らしい歌唱に接することが出来ました。まずは高松でのオペラです。残念ながらイタリア語なので歌詞は聞きとれませんでしたが、その声量に圧倒される思いで聞き入りました。次は、東京で混声合唱です。「わが大地のうた」など、心にしみる歌でした。福島第一原発の事故によって故郷に住めなくなった人々の思いに通じつものでもありました。
 福島から佐賀に避難してきた人の話を聞く機会がありました。「裏切り者」みたいに言われたりしたそうです。でも、5か月の子どものために逃げ出したとのこと。福島では放射能の危険を言うと、風評被害を増やすような受けとめ方もあるということを聞き、本当に世の中は難しいものだと思いました。

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