弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年9月19日

アフリカ四半世紀の物語を撮る

世界(アフリカ)

著者   中野智明   、 出版  つげ書房新社 

 かつて希望の国であり、一転して悲劇の国となって、今ようやく復興へ歩き出している。そんなイメージのあるアフリカの四半世紀が写真で紹介されています。
子どもたちの生き生きとした表情と笑顔は救いです。片腕を切り落とされた幼女を見ると切なくなってしまいました。
奴隷労働を幼いときから強いられる子どもたち、そして人殺しを仕事とする少年兵たち、本当にむごいことです。子どもたちの豊かな可能性をすべて奪い去るのですから・・・・。森のゴリラたちを殺し、それを食べるパワーが得られると信じて密猟者に注文する政府高官が少なくないという。ゴリラが絶滅したら大変だなんて思う余裕がないのでしょう・・・・。
黒人奴隷の積み出し港がセネガルのゴレ島にある。そこにある「奴隷の館」では、アメリカからの黒人旅行団が入ると入り口が閉ざされる。旅行客がガイドの説明を聞いて涙を流しているときに、その場にいた白人観光客が笑い声をあげ、けんかになったことがあってからの措置だという。黒人奴隷の積み出し港で笑い声をあげるなんて白人の無神経さには呆れ、怒りすら覚えます。
しかし、その次の話はもっと衝撃的でした。アフリカの黒人を奴隷として白人に売り飛ばしたのは、実は黒人有力者だったのです。敵対部族が捕虜を売り飛ばしたこともあったようです。ですから、アメリカからアフリカにやって来た黒人たちは、祖先を白人に売り渡したアフリカ人を許していないのかもしれない、というのです。アメリカの黒人たちはセネガルの現地の人々と距離を置き、警戒しているようだというのです。
アフリカが変われば地球が変わると思いますが、そうなるにはまだなかなか時間がかかりそうで大変だと思いました。
(2011年3月刊。2000円+税)

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