弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年9月17日

困ってるひと

人間

著者   大野 更紗 、 出版   ポプラ社

 原因不明の難病にある日突然見舞われた女子院生の壮絶なる闘病のバトル記です。
 なんともまあ、すさまじい病気です。そして、病気になったときの医療と社会保障の貧困さも浮き彫りにされています。それでも救いなのは、この本を書けるほどには楽天的な著者と、それを支える個性的なドクターたちの存在です。それがなければ、暗く、気分の落ち込むばかりの、頁をめくる元気も出てこない本だったでしょう。ところがこの本は大変だな、それで、その後どうしたんだろうと続きを読んでみようという気にさせます。
 福島の山奥、ムーミン谷からぽっと出てきて、東京は上智大学仏文科に入学した著者はビルマ(ミャンマー)の難民援助活動に邁進していたのです。それがストレスをためてしまったのでしょうか、ある日突然、まったく動けない身体になりました。
 ビルマの山奥によくぞ若い女性が入っていて、難民支援をがんばったものです。たいした勇気、そして元気でした。
 難病といっても原因不明ですから、あちこちの病院をたらいまわしにされます。ようやく、まともに患者として扱ってくれるドクターとめぐりあうことが出来ました。それにしても医師という職業も大変ですね。自分の私生活を投げうって難病患者ばかりの病棟を受けもち、不眠不休でがんばるというのですから・・・。
 現在進行形の「困ってるひと」の話です。ただただ、がんばってくださいね、応援してますとしか言いようがありません。
 この本を読むと、日本はアメリカのようになってはならない。ヨーロッパの多くの国のように医療費を無料化し、患者負担はないという国にすべきだと思いました。そのためには、医療も看護師も、もっと労働条件が保障されなければいけませんよね。それがあってこそ、患者は安心して治療に専念できるというものです。
(2010年11月刊。1800円+税)

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