弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年9月11日

ひろしま

日本史

著者   石内 都 、 出版   集英社

 1945年夏に広島に生きていた女性たちがそのとき着ていた衣類が鮮明な写真でとられています。
 柳田邦男の解説を紹介します。
 写真家・石内都は徹底的に現物にこだわるが、そのこだわり方が特異だ。
 撮影の対象に選ばれた資料の大部分は、女性のワンピース、ブラウス、スカート、上着、肌着など、一人ひとりの「生と死」の物語を静かに語るもので占められている。石内が伝えようとしているのは、それらのものを受用していた人間の実在と心模様だ。
 衣類の一枚一枚のデザインから、花柄や水玉などの模様、布地に至るまですべてに1945年夏という時代性が投影されている。そして、より注意深く見ると、多くは若い女の子自身の好みで、あるいは母親の娘に対する愛しさをこめて、手作りでこしらえたものであることが分かる。焼け焦げてボロボロになったところや、黒い雨に打たれて全体が黒くなっているものもある。
 写真の一点一点をじっくり見ていくと、広島の原爆被災は「死者約20数万人」などという表現では表面的でしかなく、一人ひとり様々な悲劇が20数万件も起きた事件なんだというとらえ方をしないと、真実に迫ることはできないのだと分かってくる。
 大量殺戮の原爆は、着るものひとつも手繕いして大事にしつつ生きていく心豊かな生活文化のあり方までをもこの地球上から抹殺しようとしたものだったのだ。
 なるほど、この指摘はあたっていることが、写真でよみがえっている衣類のひとつひとつを眺めていると実感として分かります。
 一見の価値ある、貴重な写真集です。
(2008年4月刊。1800円+税)

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