弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年9月 7日

特殊部隊ジェドバラ

ヨーロッパ

著者  ウィル・アーウィン    、 出版  並木書房 

 映画『史上最大の作戦』そして『プライベート・ライアン』で有名なノルマンディー上陸作戦の前に、連合軍はドイツ軍の後方撹乱のためにフランス各地に特殊部隊を送り込み、現地のレジスタンスを応援しつつ活動していたのでした。その部隊名をジェドバラと呼びます。
 アメリカ人のジェドバラ隊員は戦略事務局(OSS)に所属し、イギリス人隊員は特殊作戦執行部(SOE)の出身だった。そして、もう一人のフランス人はドゴール将軍の自由フランス軍に属していた。3人一組で、最大100組の混成チームがフランス各地に投下された。
 高高度で編隊飛行するために設計された鈍重な重爆撃機を勘と経験をたよりに低空飛行させる。目標を見つけると、対地高度180メートルで進入を開始し、失速ぎりぎりの時速約200キロにまで減速させる。そして、一人ずつ落下していく。
 ジェドバラ隊員は、ゲリラ戦では機動性が重要であると教えられ、1ヶ所に長くとどまらず、常に動きまわるように叩き込まれていた。地上では地元のレジスタンス勢力と接触し、彼らの協力を取りつけることになっていたが、レジスタンスについては、ごくわずかしか分かっていなかった。
 ジェドバラ隊員には、当然のことながら道徳心と身体をはった勇気が求められていた。そのほかにも、度胸や自信、健全な判断力、ある程度の抑制された勇猛さ、秘密情報の慎重な扱いなどを示す必要があった。任務を完了するために、隊員たちは機略縦横でなければならなかった。たとえ通信と補給が立たれた場合でも、刻々と変化する状況に順応する必要があった。
 状況をすばやく認識できる機敏な頭脳が必要だった。決断力があって、創意に富んだ頭脳と、精神的なスタミナが肉体的な持久力におとらず重要だった。また、分別と安定した感情と自制心は、ストレスの多い状況下や長期間の孤立状態のときに人ががんばり続けるために必要になる。外国人とすすんで協力する態度と適性は絶対に不可欠だった。洞察があって、説得力に富み、必要とあらば断固主張し、人あしらいに長けていなければならなかった。階級の違いをこえて他人と協力し合えることが求められていた。
 情報網を構築し、運営する方法、偽造文書の使いかた、監視のやり方、気づかれずに誰かをつける方法、つけられているときにそれを見分ける方法、そして、その対処法。すごいですね。こういうのを私も身につけてみたい気もします・・・・。
 レジスタンスのなかにはドイツ軍のスパイも潜入していた。そして、レジスタンス内部で抗争があっていた。パリではレジスタンスの大部分が共産党だった。ドゴール派は、共産党に戦後の政権をとられたくなかった。
 少し前にイギリスの看護師(ケイト・ブランジェット)がフランスに潜入してレジスタンスを支援するという映画(『シャーロット・グレイ』)を見ましたが、まさにそれと同じ活動を描いたノンフィクションでした。
(2011年4月刊。2200円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー