弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年9月 3日

原爆が消した廣島

日本史

著者    田邊  雅章  、 出版   文芸春秋

 広島の原爆ドームの対岸は、いま、平和記念公園になっています。この平和公園は昔から空き地だったのではなく、原爆が投下される前は、中島地区として賑やかな広島一の繁華街だったのです。町が6つあり、500軒にのぼる家や商店があって、2500人もの人々が居住していました。その町の様子がCG再現写真で紹介されています。
 この中島地区には橋があり、太田川との関係でT字型となって原爆投下の目印とされていた。
著者の自宅は原爆ドーム(産業奨励館)に隣接していました。もちろん、原爆によって跡形もなく消失しています。ところが、残った石燈籠や風呂釜などは白昼堂々たる泥棒に目の前で盗られてしまいました。火事場泥棒というのは、原爆投下直後の廣島にもいたのですね・・・。
 小学2年生だった著者は広島市内から田舎(母親の郷里)へ疎開させられていて無事でしたが、母親と弟を亡くしています。父親も二次被曝でまもなく亡くなりました。
 そんな著者ですが、原爆ドームの隣に自宅があったことを長く伏せて生活してきました。しかし、原爆の恐ろしさを後世に伝える必要があると気づいてから、廣島が原爆の投下によって地上から消滅する前の人々の生活の様子をCGで再現しようと立ち上がったのです。
 そんな貴重な写真が満載の本です。戦争は二度と起こさせてはならない。静かな決意をかきたてられました。大切にしたい本です。
(2010年11月刊。1800円+税)

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