弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年7月11日

ツキノワグマ

生き物

著者    大井 徹  、 出版   東海大学出版会

 残念ながら、九州にはクマは絶滅したようです。といっても、山で野生のクマと出会いたくはありませんよね。
 もし、山でいきなりクマと出会ったらどうしたらよいのかまで書かれています。死んだふりはダメです。逃げてもいけませんし、木にのぼってもダメなのです。では、どうすべきか?
 逃げない。走って逃げると、追いかけてくる可能性がある。クマに注意しながら、静かにゆっくり後退する。クマとは目をあわせず、クマとの間に木や岩をはさむようにする。クマと目を合わせると、威嚇していると思われる。クマは木登りも水泳も上手だということを忘れない。クマの逃げ道をつくっておく。
 死んだ真似はせず、地面のくぼ地にしずまり、腹や首筋、顔を守る。防御的な攻撃だとクマは後退する。クマが耳を立てて静かにどんどん近づいてきたら、捕食的な攻撃だ。そんなときは、大声をあげながら、ナイフなどで攻撃する。目や鼻への攻撃が有効だ。動き続けてクマに咬まれないようにする。ひやひや、とてもこんなことって、出来ませんよね。
ツキノワグマは飼育下で30歳、野生で28歳というのがいる。
 九州のツキノワグマは、戦前1941年に絶滅した。今から20万年前から2万年前の本州には、ヒグマとツキノワグマが同居していた。ツキノワグマのように体が大きいと、天敵が少ない、エネルギーの利用効率が小型動物よりもいい。クマは、植物を食物とすることによって体を大型化することができた。クマは雑食性で、動物質よりも栄養価の低い植物質を食物として利用している。ツキノワグマは雑食性であり、消化の良い栄養価の高い食物を好み、それを選択的に採食している。
クマが立ち上がるのは、一般には攻撃のためではない。クマは、嗅覚と視覚に強く依存している。
 メスグマは、冬眠中に出産と育児という大事業をおこなう。ツキノワグマのメスは、2~3年に1回しか繁殖しない。オスとメスの関係は一時的なもので、交尾期が終わると、それぞれ単独生活に戻る。メスグマは、子別れのあとも、子がメスのときには、母グマの近くに行動圏をもつ。
大人のオスは40平方キロ、メスは20平方キロの行動圏をもっている。
 ツキノワグマが冬眠するのは、食物が不足する冬だから。冬の間はじっと動かず、エネルギー消費をできるだけ抑えながら、蓄積脂肪でしのぐ。冬眠中のクマの心拍数や体温は、他の哺乳類ほど顕著に低くはない。冬眠中のクマは、排尿も排便もしない。しかし、血液組成は正常に保たれている。
 クマの冬眠は、摂取も飲みもしないという特徴がある。冬眠中、クマは飲まず食わずの状態にある。冬眠中のエネルギーの素は、ほとんど脂肪である。冬眠中のクマは、特別な方法でタンパク質の代謝が行われ、筋肉が維持されている。
 クマの冬眠って、不思議ですよね。冬眠していて、じっとしていて筋肉が維持できるなんて・・・。そして、尿も便も排出しないのに健全な身体を維持できるなんて・・・。
決して出会いたくはありませんが、森の住人の一人であることは間違いありません。日本から絶滅したと言われないようにしましょうね。
(2009年11月刊。3200円+税)

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