弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年6月26日

がんの練習帳

人間

著者  中川 恵一    、 出版 新潮新書

 日本は世界一のがん大国だ。日本人の2人1人ががんになり、日本人の3人に1人ががんで亡くなる。だから、人生の設計図のなかにがんを織り込んでおく必要があるし、その予習が絶対に必要だ。
 私も父をがんで亡くしました。私の親しい弁護士のなかにもがんになって手術したという人が何人もいます。幸い、みなさん元気ですが、私も今から予習しておく必要を感じています。
 がん細胞は健康な人の身体でも1日に5000個も発生しては消えていく。DNAのコピーミスは1日に数億回も起きているし、このコピーミスが起こらなければ現在の私たちの存在はない。DNAのコピーミスは、進化の原動力なのである。
 がんとは、簡単にいうと、細胞の老化である。遺伝するがんは、がん全体の5%程度。家系より、生活習慣の方がはるかに影響を与える。
タバコは、がんの最大の原因である。お酒とタバコが重なると、がんの危険は一気に高まる。
 どんな生活を送っても、がんのリスクは半分近く残る。
すべてのがんで検診が有効とは言えない。早期がんは、胃がんや肺がんだと症状はないので、定期的な検診だけが発見する手段だ。子宮がん、大腸がん、乳がんでは、やらなきゃソンというくらいに検診は有効だ。前立腺がんは、知らぬが仏のことも多い。
 腫瘍マーカーは、正常な細胞でも作られることがあり、この数値だけではがんは判明しない。
がんの治療法のなかで、科学的に効果が確認されているのは、手術、放射能治療、価額療法の三つだけ。
 ほとんどのがん治療は保険がきく。1ヶ月の負担はせいぜい8万円程度になる(高額療養制度をつかって)。ところが、フランスのがん医療には自己負担金がない。ヨーロッパでは多くの国がそうなっている。うへーっ、日本でもそうしたいものですよね。病気になったとき安心して治療を受けられるって、本当に大切なことですよね。
 抗がんをうたったサプリメントの効果はほとんど期待できない。しかし、がん患者の8割がサプリメントなどの代替治療法を実行している。サプリメント市場は年間1兆円の売上となっている。
たまに、こんな本を読んで日頃からがんに対する心がまえを身につけておきたいものです。

(2011年4月刊。700円+税)

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