弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年6月19日

天魔ゆく空

日本史

著者    真保 裕一  、 出版   講談社

 『ホワイトアウト』など、社会派の推理小説作家とばかり思っていた著者が、このところ歴史、時代小説にも進出していたとは、ちっとも知りませんでした。
 ときは室町時代。足利将軍はとっくに権勢を喪い、細川や山名という有力武将が激しい抗争を展開していた。
 八代将軍の足利義政は政治から逃げ、その正室(妻)の日野富子が幕府の実権を握っている。その子、九代将軍・足利義尚、そして十代将軍・足利義材、さらには八代将軍の兄の子である十一代将軍は、いずれも将軍家の実力を伴っていなかった。すべて武将たちの争闘のなかに漂流する存在でしかない。
 そんな京都の政治のなかで、本書の主人公の細川政元が次第に力をつけてのしあがっていくのです。一度は将軍の座に就いた者(足利義材)を追い落とすために八千の軍勢を率いて細川政元は出撃した。そして、比叡山延暦寺に焼き打ちをかけた。
 うひゃあ、織田信長よりも70年も前に根本中堂を火攻めした武将がいたのですね・・・。そして、細川政元の最期は信頼していた臣下に裏切られたのです。これまた信長と同じです。
 室町時代の情景が活写された本として面白く、一心に読みふけってしまいました。
(2011年4月刊。1700円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー