弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年4月21日

ヘルファイヤー・クラブ

ヨーロッパ

著者   イーヴリン・ロード、 出版   東洋書林
 
 ヘルファイヤー・クラブとは、地獄(ヘル)の業火(ファイアー)という意味です。18世紀のイギリス社会にいくつもあった秘密クラブです。
 ヘルファイヤー・クラブには三つの構成要素があった。すべてのクラブは社会や教会が教える道徳や倫理を否定し、社会に対して集団的に破壊活動をおこなった。彼らは深夜、面白半分に罪のない通行人を襲った。第二に宗教に対する嘲笑的態度であり、第三に、セックスに眈溺した。会員は常に男性であり、若くて有閑階級の出身者だった。
 ロンドンの人口は、1700年に57万5千人(イギリスの総人口の7%)、1750年には67万5千人(同11%)。毎年7千人もの人々がロンドンに流入していた。
ヘルファイヤー・クラブは、宗教に対してますます懐疑的になっていった社会を如実に示すものであった。クラブ会員の多くは、ヨーロッパのグランド・ツアーに行ったことがあった。グランド・ツアーはヨーロッパの宮廷、飾り棚、珍品、結婚式、宴会、葬儀などをできるだけ見ようとするもの。グランド・ツアーは、送り出す一家にとってお金のかかるものだった。たいていの家が望んだのは、教育の仕上げであり、洗練と経験を得させしめることだった。多くの旅先が、ローマ・カトリックの国々という危険があった。ローマ法王に謁見することが普通だったが、カトリック教徒なら法王の履物に接吻しなければいけないところ、お辞儀をするだけで良かった。
 イギリス人は、イタリアでは夫も妻も浮気をすることにひどく驚いた。上流階級では、夫も妻も、愛人をつくっても表向きはプラトニックな関係だとしておけば許されることになっていた。そりゃあ、驚きますよね。でも、これはフランスでも同じでしたよね。
18世紀のイギリスでは、セックスはペンで生計を立てようとする作家やジャーナリストにとって格好の話題であり、性的に露骨な本がますます多く出版されるようになった。
女性は父権制社会がつくった規制によって現状にとめおかれ、その枠組みから外れることは許されなかった。男性は愛人を囲い、売春宿で快楽をむさぼることに呵責を感じなかった。性的に露骨な本を購入できたのは、それらを書斎やクラブに隠しもっていられるきわめて裕福な人々だけだった。「わいせつ本」は、ヘルファイヤー・クラブの会員のように、国会に議席を有しており、国法を制定したり、執行したりする権威ある人々、すなわち上流階級の人々の特権だった。
イギリスの都市における売春は頭痛の種で、街頭で誰の目にもつくものだった。
イギリスでは1837年に住民登録が確立させると、人生の大事な出生、結婚、死亡は、もはや教会の専売事項ではなくなった。
1840年代には国の調査委員会による国勢調査や労働者階級の状況についての調査が繰り返し実施された。これによって労働者の生活はいい方向に変わった。
18世紀のイギリス社会が分析されている本です。宗教のもつマイナス面が指摘されています。先日、アメリカのキリスト教会の牧師がコーランを焼き捨て、それに怒ったイスラム教徒の人々が国連機関を襲撃するという事件が発生しました。この牧師(神父でしたか・・・?)は博愛精神を身につけていないわけですが、アメリカ社会がそんな人を事実上容認しているというのは恐ろしいことです。やはり、世の中にはやってはいけないことが多々あるわけです。みんな違って、みんないいという金子みすずの精神は宗教の世界でも生かされなければ嘘でしょう。
(2010年8月刊。3600円+税)
静岡にある浜岡原発を直ちに廃止すべきだと毎日新聞に大きな見出しのコラム記事がのっていました。たしかにそうですよね。福島原発の大事故でも恐ろしいことですが、東海大地震が予測されているときに、「絶対安全」の神話が崩れてしまったからには即刻、手を打つべきでしょう。無為無策で手をこまねいていて、東京が住めなくなったら、日本はどうなりますか・・・。
日本人は、今もっと怒り、声を上げるべきではないでしょうか。あきらめてはいけません。投票率が5割を切るなんて、子孫のことを考えたら、許されませんよ。声かけあい、励ましあって、政府と電力会社を激しく監視すべきだと思います。

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