弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2011年1月23日

戦国合戦の舞台裏

日本史(戦国)

  著者 盛本 昌広、  洋泉社 歴史新書y出版
 
戦国時代の人々の暮らしぶりが伝わってくる本です。知らなかった言葉がたくさん出てきて解説されているのも、うれしいことです。
重説(じゅうせつ)は、再度の情報のこと。戦国時代、敵味方の消息を知るのは必須不可欠ですが、虚報の心配もあります。そこで、二重チェックが必要となります。
注進状とは、一般に敵の動きや合戦の結果といった軍事情報や機密情報を記した文書のこと。注進状は、戦国時大名が出陣するのに不可欠な情報であった。
蝕口(ふれくち)は、出陣を決断したとき陣触(じんぶれ)が出されるが、その陣触を伝える役職をさす。触口の下に小触口がいて、この小触口が実際に侍や村落に出向いて命令を伝える。このつたえる役目を果たしたのが定使(じょうし)であった。
 着到(ちゃくとう)とは、古代以来使われていた言葉で、到着したことを意味する。炭鉱でも、同じく着到という用語がつかわれていました。
小荷駄隊(こにだたい)は、編成された兵糧運搬部隊のこと。
腰兵粮は、腰につけた当時の携行食糧である乾飯(ほしいい)のこと。
 後詰(ごづめ)は、味方の城を包囲している敵を後方から攻めるために出陣すること。
信長が兵糧自弁の原則から一歩ふみ出せたのは、兵糧を大量に購入するだけの資金を持っていたから。信長は各地を攻略していき、財政基盤となる直轄領を設定し、同時に堺など有力な都市も支配下に置いて資金を吸い上げた。また矢銭(やせん。軍用金)の納入の強制なども資金源であったと考えられる。
備場(そなえば)は合戦の場のこと。そこでは高声(こうしょう)や雑談(ぞうたん)が禁止されている。兵卒のおしゃべりは禁止されていた。声高は大将が軍勢を指揮するときに発する声のこと。
 仕寄(しよせ)とは、城攻めの手だてを尽くし、徐々に城の中心に迫っていく状況をあらわす言葉。
自落(じらく)とは、自らの意思で城や屋敷から退くこと。
落武者狩りとは、単なる物取りではなく、敵方の通行を封鎖せよという命令を受けて行われていた。
 まだまだ世の中は知らないことばかりですね。
(2010年10月刊。860円+税)

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