弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年12月29日

葡萄酒の戦略

世界(フランス)

 著者 前田 琢磨 、 東洋経済新報社 出版 
 
 驚きのワイン試飲会が紹介されています。ときは1976年5月、ところはパリ。
フランスのワインスクール主催でワイン試飲会が開かれた。審査員は全員フランス人で、ワイン業界で名の知れた大御所ぞろい。フランス赤ワイン4本、白ワイン4本。カリフォルニアワインが赤6本、白 6本。これをボトルのラベルを隠して銘柄が分からない状態で試飲して20点満点で評価する。結果は・・・・。白ワインの審査結果は、アメリカワインが1、3、4、6、9、10位を占めた。フランスワインは2番手でしかない。そして、次に赤ワインです。これでもアメリカワインが、1、5、7、8、9、10位を占めた。つまり、赤白ともにアメリカワインが1位、金メダルを獲得した。フランスの名士たちにとって、きわめてショッキングな出来事であった。
 著者は、この結果について、1000年以上の伝統をもつテロワール主義ワインに対して、数十年間、科学的研鑽を行いながら技術を進化させてきた「セパージュ主義」ワインが勝利をおさめたのだと解説しています。
審査員は、ワインを目、鼻、口、バランスの4つの観点で評価する。目とは、ワインの外観。ワインの清澄度や色の具合で、その健全性を確認する。鼻とは、香りのこと。一般的にブドウ由来の第一アロマ、発酵由来の第二アロマ、熟成由来の第三アロマといった、さまざまな香りとその強さを確認する。口は味わいのこと。風味、酸味、苦味、甘味、タンニン、アルコール度などが確認ポイント。バランスとは、個別に目、鼻、口でとらえたことを全体的な印象で総合評価する。うむむ、これって簡単なようで、とても難しいことですよね。
 「セパージュ主義」的ワイン造りは、科学技術による。いい苗木を手に入れたら、その苗木にあったテロワールを選択し、できるだけブドウ本来の美味しさを引き出す生産技術によって、質の高いワインをつくりあげる。
世界のワイン生産量は284億リットル。その内訳はフランス53億リットル、イタリア47億リットル、スペイン40億リットル、アメリカ23億リットル。そしてアルゼンチン15億リットル。これら上位5ヶ国で、全世界のワイン生産量の6割を占める。
 2006年の統計によると、日本人は一人あたり年間3本のワインを飲み、フランス人は
73本を飲む。
 さあ、今夜も赤ワインを飲みたくなってきました。ブルゴーニュのぶどう畑を思い出しながら飲むことにしましょう。
(2010年10月刊。2400円+税)

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