弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年9月19日

北帰行

司法(警察)

著者:佐々木譲、出版社:角川書店

 いつもの警察小説ではありませんでした。長編クライム・サスペンスと銘うった小説です。
 ロシアから送りこまれたヒットウーマンが大活躍します。といっても、次々にピストルで男たちを殺していくのを活躍と名づけるのは、少し気が引けます。
 暴力団がもちろん登場します。六本木を縄張りにしています。このところ、我が福岡でも拳銃発射事件が相次ぎ、しかも犯人もピストルも検挙・押収されていませんので、治安上の不安がつのります。
 警察には、もっと頑張ってほしいですし、私たちも、本気で暴力団依存体質から脱却すべきではないでしょうか。
 そのためには、大型公共土木工事優先の政治を転換する必要があります。大型公共土木工事が暴力団の喰いもの、最大の資金源であることを知らない市民が多すぎると思います。マスコミは、そのことをもっと大々的に、かつ、連続的に報道すべきではないでしょうか。
 先日の西部ガスへの連続発砲事件についての解説記事のなかで、工事受注額の1~5%を暴力団へ上納するシステムがあり、西部ガスがそれを拒否したことによる嫌がらせだという指摘はそのとおりだと思います。そんなこといって、おかしいでしょ。これは、みんなで声をそろえて、おかしい、許せないと叫ばないと、いつまでたってもなくならないと私は思います。
 だって、誰だって、自分一人がピストル向けられたら、何も言えませんからね。ともかく、この不景気な世の中で、ひとり暴力団だけがぬくぬくとしているなんて、とんでもないことですよ・・・。
 新潟、稚内に巣喰うコリアン系のロシアン・マフィアも脇役として登場してきます。
 今回は警視庁組織犯罪対策部は、後手後手にまわっていて、ほんの刺身のツマとしてしか登場しません。
 そんなことじゃあ、困るんだよな・・・。そう思わせる内容でした。
 車中で読みふけっているうちに終点に着いてしまいました。まだ読み終わっていませんでしたので、喫茶店に入って好きなカフェラテを飲みながら読了してしまいました。
 だって、結末がどうなったのか知らなくては、次へ仕事への頭の切り換えができませんからですね・・・。
(2010年1月刊。1800円+税)

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