弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年6月 5日

地平線の彼方に

世界(アフリカ)

小倉 寛太郎 、新日本出版社  
実に素晴らしい感動的な写真集です。アフリカの大地と、そこに生きる野生の動物たちが脈動しています。私たち人間と同じように、生命の尊厳は守られるべきだと実感させてくれる迫真の出来映えです。
 著者は、惜しくも、既に亡くなられています。私は、一度だけ名刺交換させていただき、声をかわしたことがあります。『沈まぬ太陽』の主人公・恩地元のモデルになった人です。古武士然とした風格を感じました。JALのナイロビ(ケニア)支店に飛ばされ、そこでもくじけずに、生きがいの一つとして動物写真を撮ったのです。ですから、もちろんアマチュアカメラマンなのですが、ここまでくるとプロフェッショナルとしか言いようのない傑作ぞろいです。
 写真を撮る前は、ハンターだったようです。でも、動物を殺すより写真の方が断然いいですよね。本当にそう思います。
アフリカは人類発祥の地でもあります。ジャングルからサバンナに出た人類らは、4本足から2本足歩行へ前進し、団結して知恵を働かせながら、苛酷な自然環境を生き延び、世界各地へ放散していったのでした。
 天知る、地知る、形知る。人が知らないと思って、内緒事をしていると、悪いことをしても天は見ている。大地も見ている。何よりも、お前が知っているじゃないか。だから、人が見ていないからといって、不正、悪事ははたらくな。
一体どうやって、こんなに近くからライオンとその子を撮ったのだろうかと不思議な写真があります。よほど著者はライオン一家から信用されていたのでしょう・・・・。
 たとえば、私が誘惑と脅迫に屈したとする。そうすると、私の心の傷、これは態度、挙措  にも出てくるだろう。そして、自分の生き方に自信を失うから、それは子どもに響くはず。子どもは親の後ろ姿を、背を見て育つと言うけれど、背中だけでなく、やはり親の生き方、片言隻句からも子どもは影響しているはず。今は分からなくても、やがては、と大いなる楽観を持っている。
 さすがに、偉大なる先人の言葉は含蓄深いものがあります。雄大な大自然の躍動する野生動物の写真に、目も心も洗われます。ぜひ、手にとってご覧ください。
 
(2010年3月刊。3500円+税)

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