弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年5月31日

我が家にミツバチがやって来た

生き物

著者  久志 富士男   、 高文研 出版 
 
 とても面白くて、次の裁判を待つあいだに読みはじめたのですが、その裁判を延期にしてもらって読みふけりたい気分になったほどでした。
 なぜって、たとえばミツバチたちがヒマになったら、押しくらまんじゅうをしたり、隠れんぼをして遊ぶというんですよ。これにはさすがの私も驚きましたね。カラスがすべり台ですべって遊ぶというのは知っていましたが、ミツバチも遊ぶんですよ・・・・。
ニホンミツバチは不快なことがあると近くの人間に当たり散らす。たとえば、顔に体当たりする。また、砂糖水はまずいので、最後の非常食としてしか利用しない。なんていう話が満載なんです。セイヨウミツバチではなく、ニホンミツバチの話です。野生のミツバチたちのたくましさには、感嘆してしまいます。
これまでの蜂の巣からさる(分蜂)かどうかは、外勤蜂の過半数の意向で決まる。女王蜂が決めるわけではない。そして、個々のハチは行くのか残るのか、自分の意思で決めている。一度は出ると決めても、あとでやっぱり残ると思い直して戻ってくるハチもいる。うへーっ、これって、いかにも人間的ですね・・・・。
 最近では、田園地帯ではハチは生息できなくなっている。農薬のせいである。稲田や果樹園、それにゴルフ場の近くは避けなければいけない。大規模農場だと、100メートルくらい離れていても、ハチは1年以内に死滅する。
 風下で突然に農薬に襲われると、ハチたちは巣門に出て必死に扇いで農薬を押し返そうとがんばるが、力尽き、巣箱の内外でもがきながら次々に死んでいく。
巣の中にいる雄バチを居候として捕まえて殺すと、働き蜂の機嫌が悪くなり、そのあと人を警戒するようになる。ニホンミツバチは全体の繁殖を考えると、オス蜂も大事にすべきだ。
セイタカアワダチソウは年に2回、花を咲かせ、ミツバチに多大の貢献をしている。
 ミツバチはミツを取られても怒らないが、子どもを傷められると怒る。
人に慣れていても怒る。ミツは切り傷や火傷にすごく効く。外勤ハチは仕事がなくなると、お互いにダニ取りの羽づくろいをしたり、昆虫のくせに押しくらまんじゅうや隠れん坊をして遊ぶようになる。
 近くに強い勢力のハチ集団がいると、力の弱いハチ集団は、そのうちに戦い疲れて防戦しなくなり、女王蜂が殺され、自分たちは相手方に合流してしまう。
 雑木がなくなるとニホンミツバチは死滅し、ニホンミツバチが消滅すると農業は衰退する。この連鎖が見えないまま針葉樹の造林がすすめられてきた。
 ニホンミツバチは力ずくで従わせることはできない。本来は臆病な生き物である。とくに人が近くにいると、警戒を怠らない。ニホンミツバチと付き合うには、優しく接することである。そうすると、必ず信頼関係が生まれてくる。ニホンミツバチに近づくときには、挨拶を忘れてはいけない。
人間が巣箱の存在を忘れていても、ハチはいつも人間の存在を意識している。ときどき、指を番兵ハチに近づけたり、番兵ハチの脇腹をくすぐったりのスキンシップをしてやる。
ハチの羽音は、常に、そのときの気持ちを表現している。羽音が聞こえるときは、ハチは何かを言っている。繁殖期は、うれしいのか、羽音は朗らかで、温和だ。花蜜が豊富なとき、ミツが十分に貯まっているときも同じだ。
女王蜂が老齢で産卵が停止されると、王国に存亡の危機が迫り、どんな群れも荒くなる。これは女王が3年目に入る前後に起こりがちである。
ニホンミツバチは、オオスズメバチに襲われると、人に助けを求める。子どもがシクシク泣くような、か細い羽音で人の胸元をジグザグに飛んだり、人に止まったりする。「あいつらを追っ払ってください」と言っているようである。ま、まさか・・・・と思いました。
ニホンミツバチは、ミツの味がセイヨウミツバチと比べものにならないほど良い。ニホンミツバチは病気にかからず、ダニにもやられない。放任しても
元気に育つ。
 いやはや、もとは高校で英語の教師だった人のニホンミツバチを飼った体験にもとづく面白い本です。一読をおすすめします。
(2010年4月刊。2000円+税)

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