弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年5月29日

宮本常一が撮った昭和の情景(上・下)

社会

著者:宮本常一、出版社:毎日新聞社

 昭和30年(1955年)から昭和55年(1980年)まで、宮本常一が日本全国を駆けめぐって撮った写真の数々です。宮本常一の撮った写真10万枚には、相手を不快にし、怒らせるに違いない、一歩も二歩も踏み込まないと撮れないようなカットは1枚もない。
 旅に出るときの注意4ヶ条。
第1。汽車に乗ったら、窓から外をよく見る。田や畑に何が植えられているか、育ちは良いか。家は大きいか小さいか。瓦屋根か草葺きか。駅に着いたら、人の服装に注意せよ。駅には、どんな荷物が置かれているか。
第2。新しく訪ねた土地では、必ず高い所に上がって、方向を知り、目立つものを見よ。そして、目立つものを見つけたら、そこへ行って見ること。
第3。お金があったら、その土地の名物や料理は食べてみよ。暮らしが分かる。
第4。時間のゆとりがあったら、できるだけ歩いてみること。
これを読んで、私は昨年5月に秋田県能代に行ったことを思い出しました。歩いて海岸近くの林に行き、そこにある散歩コースを歩いてみました。そして、夜は侘びしい町の居酒屋で食事をして、少しだけ能代の町の素顔を知った気分になりました。たしかに自分の足で歩いてみると、車で通過するだけでは見えないものが見えてきます。
不思議な魅力のある写真集だ。ほっとする温かさ。以前に眺めた気のする懐かしさ。この町、この村なら、行ってみたい。住んでみたいと思わせる落ち着き、静けさ、佇まい、このように感じる人が多いだろう。
まことにそのとおりです。昭和30年というと、私が小学校に上がる前のころです。近くに大きな炭鉱社宅がありました。大勢の子どもたちが群れをなしてメンコ(私はパチと呼んでいました)遊びをしていました。
父の郷里の農村地帯(大川市内)にいくと、大きな黒光りのするカマドがあり、混浴の共同浴場がありました。家は、どこもカヤぶきです。父の実家には白亜の土蔵も2つありました。昔は小屋で馬を飼っていたようです。
昔なつかしい写真のオンパレードです。幸いにして、私は父母たちの写真集を引き継いでいますので、少し整理してコンパクトな写真集にまとめてみようという気になりました。
(2009年6月刊。各2800円+税)

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