弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年5月 5日

月華の銀橋

日本史(江戸)

著者 高任 和夫、 出版 講談社

 荻原重秀と言えば、貨幣を改鋳して幕府の財政を好転させつつ私腹を肥やした悪の権化というイメージを抱いていました。この本は、その荻原を主人公にしているだけあって、決して極悪人などではなく、幕府の破たんした財政の立て直しのために日夜奮闘した実務官僚であると訴えています。荻原重秀の対極にあったのが新井白石です。
 新井白石は、大坂商人として高名な河村瑞賢の知遇を得ていた。同じ豪商でも、紀伊國文左衛門や奈良屋茂左衛門のように、吉原で狂ったように散財することはなかった。
 重秀は、将軍綱吉の時代に出世していった。綱吉は、面命(めんめい)と称して、面前に当事者を呼び出し、自ら新たな人事をすすめていった。重秀は32歳のとき、勘定吟味役として老中に直結し、将軍の意向を体現する者となった。
 禄高は200石の加増を受けて、750石取りとなった。
 重秀は佐渡金山に派遣され、佐渡奉行を22年間もつとめた。
 慶長小判には金が8割4分、慶長銀には銀が8割ふくまれている。改鋳にあたっては、それぞれ6~7割ほどに減らす。それは幕府直轄の銀山の産出量の減少にある。
 慶長小判2枚で、新たな小判を3枚つくれる。これによって幕府の得られる出目(でめ。改鋳差益金)は450万両にのぼる。
 貨幣改鋳の裏話を聞いているような錯覚に陥りました。視点を変えて時代を捉えなおしてみたいと思いました。
 
(2009年11月刊。1800円+税)

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