弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年4月20日

趙紫陽、極秘回想録

中国

著者:趙紫陽、出版社:光文社

 天安門事件のときに中国共産党のトップ、総書記だった著者が鄧小平によって権力の座から追われ、北京の自宅に亡くなるまでの16年間の軟禁生活を余儀なくされました。
 その軟禁生活のなかで著者は、60分テープ30本に回想録を吹き込んでいました。それが2005年に著者が亡くなったあと、文書化されたものが本書です。
 趙紫陽は、広東省の党委員会第一書記に1965年、46歳という若さで就任した。しかし、やがて文化大革命によって失脚し、湖南省の機械工場で組立工として働かされた。ところが、1971年に突如として復活した。その行政手腕を周恩来に見込まれたことによる。
 胡耀邦と趙紫陽の違いは、胡のほうは政治生活の大半を中央で送ってきた。そのため、中央に多数の後援者や親しい関係者がいた。それに対して趙のほうは、中央ではなく地方の省党委員会で働いていたので、中央には鄧小平以外の後援者はいなかった。
 趙紫陽が中国について、結論としてどのようにみていたか、それを紹介したいと思います。驚きました。
 われわれ社会主義国家の民主主義は、すべて表面的なものにすぎない。国民が主役の制度ではなく、国民がひとにぎりの、あるいはたった一人の人間に支配されている制度だ。国家の近代化を望むなら、市場経済を導入するだけでなく、政治体制として議会制民主主義を採用すべきだ。
 そのためには、複数政党制と報道の自由を認めることだ。
 人民解放軍の国軍化という問題もあるが、それよりも重要な、法制度の改革と司法の独立を優先すべきである。
 すごいことですよね。中国のトップ(だった人)がここまで考えていたというのは信じられません。
 鄧小平は、中国共産党のなかで特別の存在であった。重要な事柄については、すべて鄧小平に助言を求めなければならないということが、正式な党機関で決められた。
 まさに、一党ではなく、一人独裁です。信じられない馬鹿げた決定ですよね。
 鄧小平は、西側の三権分立を絶対に取り入れてはならないと叫んでいた。
 さまざまな制限、そして抑制と均衡がなく、権力が極度に集中している体制はあらゆる時点で優れている。鄧小平は、このように考えていた。
 鄧小平は、国民が街頭デモや嘆願書や抗議行動を通じて意見を表明することをひどく嫌った。それどころか、そのような活動を禁じる法律をつくるべきだと考えた。抗議運動が発生するたび、強圧的な手段をつかって鎮圧せよと命令した。鄧小平は、スターリンや毛沢東の晩年から、あるいは文化大革命時代の自分の経営から苦い教訓を学んだ。
 党内と社会の民主化拡大、家長制の廃止などの問題を完全に解決するためには、政治体制における過度の権力集中を改める必要がある。しかし、鄧小平は、権力集中と独裁政治を非常に重視して、それを保持すべきだと考えていた。
 中国共産党の最上層にいる指導者たちの、実にドロドロした複雑な人間関係、そして泥沼のなかでの息詰まる権力抗争が実に生き生きと描かれています。
 一読の価値ある本ですが、惜しむらくは2冊買うと5200円プラス消費税と高価なことです。
(2010年1月刊。2600円+税)

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