弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年4月 8日

民主主義がアフリカ経済を殺す

世界(アフリカ)

著者 ポール・コリアー、 出版 日経BP社

 アフリカの現実は今もってなかなか厳しいようです。どうして光明が見えてこないのか、不思議でなりません。一刻も早く、南アメリカのような大きなうなりのなかで、人々の安定した生活が平和のうちに確立されることを願います。
 この本は、アメリカの国々のかかえる現実を冷静に分析し、その対処法について考えています。
 1945年以降、全世界で成功したクーデターは、357件。その陰には、多くのクーデター未遂がある。アフリカでは、成功したクーデターは826件。未遂は109件。未然防止が145件もあった。アフリカでは一つの国で7件の「外科手術」が試みられたことになる。
 民主主義は貧しくない社会では安全を強化するが、貧しい社会をいっそう危険に陥れる。その分かれ目は、一人当たり年2700ドル、1日7ドルの所得ラインだ。最底辺の10億人の住む国の所得は、すべてこれを下回っている。民主主義は、これらの国では暴力の危険性を高める。
 これらの国では、有権者は自分たちの目の前にある選択肢について、ほとんど情報を持っていない。得られる情報が杜撰なうえ、有権者は民族的アイデンティティーによって支持するかどうかを決める。有権者は、民族的忠誠の殻に閉じこもり、候補者がたとえ犯罪者でも支持する。このとき、犯罪者だけが腐敗という機会を活用する。
 シエラレオネは安定している。これは、常駐するイギリス軍兵士はわずか80人にすぎないが、何か問題が発生したらイギリス本土から一夜にして部隊が飛来するという10年協定が結ばれていることによる。
 国際的な援助のうち11%が軍事費に流れている。そして、軍事費は暴力の抑止力になっていない。むしろ、紛争後の政府による高額の軍事費は逆に暴力を誘発している。
 正規軍が使用するために購入された銃が、反政府勢力に流れている。
 政府軍の兵士の給料が低いので、兵士たちは武器庫から盗んで売ろうとする。安価に手に入る銃が内戦リスクを高めている。
 最底辺の10億人の国々の全体の軍事費は、合計90億ドルだが、そのうち最高40%が援助金によって賄われている。そして、越境が容易な地域では、一国の政府が購入した大量の銃が徐々に近隣諸国の闇市場に漏出している。闇市場で取引される安価な銃が内戦リスクを高めている。紛争後の国はたいてい軍事費大国になるか、軍は逆効果をもたらしており、抑止力になるどころか、まさにリスクを誘発している。軍事費は過剰であるばかりか、援助費がそれを支えている。
 若い男性は非常に危険だ。全人口に対する若い男性の割合が倍増すると、内戦リスクは5年間で5%から20%まで増える。ただし、エリトリア人民解放戦線の3分の1は女性だった。
 最底辺の10億人の国々の大半では、公共監視システムはその最上階から解体されている。その結果である巨大な腐敗は、公的資金を浪費したばかりか、政治的詐欺師たちに力を与えた。こうした国では、横領によって資金を調達する利権政治が権力維持の標準的な手法だった。
 いやはや、アフリカの再生にはまだまだかなりの時間を必要としているようです。残念です。暴力によらない再生を目指す人々の集団がうまれ、その集団がうねりを起こしていってほしいものです。

 
(2010年3月刊。2200円+税)

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