弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年3月21日

まねき通り十二景

日本史(江戸)

著者 山本 一力、 出版 中央公論新社

 江戸時代の下町の人情話なら、この人ですね。いつもながら、しっとり、じっくり、味わい深い話のオンパレードです。読みながら、ああ、生きてて良かったなと思わせます。ほんわか、まったり、じわーんと来る話が繰り広げられます。
 こんなストーリーを思い描くというのは、著者のどんな体験にもとづくのか、一度たずねてみたいという気もします。発想が日常的であり、かつ、奇抜だと思うのです。
 オビに書かれている言葉が、この本の山本一力ワールドを端的に表現しています。
 ウナギに豆腐に青物、履き物に雨具、一膳飯屋、駕籠宿―14軒の店が連なる、お江戸深川冬木町、笑いと涙を描く著者真骨頂の人情物語。
 そして、裏表紙にもありました。
 こつこつ働く大人たち。のびのび育つ子どもたち。家族にも、商いにも、大切なのは人のぬくもり。
 この、何とも言えない、ほんわかとした、あったかい温もりの山本一力ワールドをまだ知らない人は、一度ぜひ騙されたと思って浸ってみることをお勧めします。きっと、私をうらむことはないと思いますよ。信じるものは救われますからね……。

(2009年12月刊。1500円+税)

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