弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2010年2月11日

人間力の磨き方

司法

著者 萬年 浩雄、 出版 民事法研究会

 弁護士にとって実務に役立つ心がまえやヒントがたくさん盛り込まれている本です。
 弁護士費用を値切る人は無責任な人間であることが多い。
 これは、私も同感です。なんでも値切るような癖のついた人は、要注意です。
 打ち合わせ中でも、電話には出るようにしている。目の前にいる客には失礼になるが、短時間で解決できるときは電話に出て解決するのがいい。
 まったく同感です。下手すると1日に何本どころか何十本も電話がかかってくるのに、それをすべて「あとでこちらからかけなおします」なんて対応していたら、とても事件がまわりません。打合せ中や相談を受けているときには、かけて来た人の名前は目の前にいる客には分からないよう、事務局の書いたメモに従って対応します。事務員が依頼者の名前を呼ぶことは極力ないようにすべきです。
 電話は相手の姿こそ見えないが、相手の品格はよく見える。
 電話するときの姿勢は、そのまま相手に伝わるものだという指摘はあたっていると思います。
 損保会社の顧問弁護士として、被害者本人の直接折衝にあたる。その示談交渉で駆け引きはしない。支払うべき賠償を事前に、または本人の面前で一気に計算し、そのメモを示して示談を迫る。
 示談交渉は、相手の顔の表情を見ながら、一気に示談する。
 示談交渉は、いかに相手方を説得するのか、まさに人間性の勝負なのである。
 電話交渉は難しい。とにかく、弁護士も若いうちは電話で商売してはいけない。足を運んで、相手方と交渉する。そうすると、その人の熱意に打たれて協力する姿勢に変わる。面識のない人が電話で請求してくるときには、適当にあしらったらよい。
 弁護士には、役者の要素がなければいけない。頭を下げたり、怒鳴ったり、ひたすら哀願したり、交渉のシナリオの展開を考えながら、計算して演ずる必要がある。
 交渉は人間性の勝負である。人間性で勝負しながら、計算された演技をするのが交渉術の要諦である。
 刑事弁護人は、被告人を裁いてはいけない。被告人を裁くのは裁判官である。しかしながら、刑事弁護人は常に被告人の言いなりになる必要はない。不合理な弁解に対しては、それでは裁判所に通用しないよと言いながら、法廷では被告人の言うとおりに弁論する。これは、被告人の納得感を満足させるためである。
 民事事件については、基本的に和解で解決すべきものだと考えている。
 この点、私もまったく同感です。
 著者は証人尋問にあたって、もちろん証拠・記録を全部読みなおしたうえでのことでしょうが、メモなしで承認を尋問する。そのほうが躍動感があるからであると強調しています。これは言うは易く、行うは難しです。
弁護士への誘惑の実情、そして危険な落とし穴も紹介されていて、改めて大変勉強になりました。ただ、司法改革やロースクール(法科大学院)についての考え方には賛同できません。そこで優秀かつ真面目な若手がどんどん生まれています。
なにはともあれ、先輩弁護士としての教訓に満ちた本として一読をお勧めします。
著者は、全国に先駆けて当番弁護士を実施した福岡県弁護士会のなかで、その必要性と意義を真っ先に提唱した弁護士でもあります。まさしく先見の明がありました。
 
(2009年3月刊。2800円+税)

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