弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年12月10日

「二十歳の戦争」

世界(ヨーロッパ)

著者 ミケル・シグアン、 出版 沖積舎

 ある知識人のスペイン内戦回想録というサブ・タイトルのついた本です。
 私は20歳のとき、東大闘争の渦中にいて、いわゆるゲバルトの最前線に立っていたことがあります。もっとも、相手も私もせいぜい角材しか持っていませんでした(なかには鉄パイプとか、釘のついた角材を手にしていた人もいましたが、幸いなことに私は見かけただけで、直接むかいあうことはありませんでした)。はじめはヘルメットもかぶっていませんでした。飛んできた小石が頭に当たり、真っ赤な血が出て白いワイシャツをダメにしたことがあります。しばらく頭に包帯を巻いていましたので、過激派学生と間違えられていやでした。
 この本を読むと、私たちの学園闘争があまりにも子供じみた牧歌的なものであることを自覚させられ、苦笑せざるをえませんでした。それでも、当時、私たちは真剣でしたし、闘争の渦中に過労のため身近なクラスメイトが急性白血病で亡くなったり、精神のバランスを喪って入院したりということは起きていました。
 東大闘争では、ともかく学生に死者を出すなということが至上命題だったことをあとで知りました。東大を舞台とした内ゲバ(全共闘内部のセクトの武力抗争)でも、幸いにして東大では死者は出ませんでした。ただし、あとで内ゲバによって多数の死者が出たのはご承知のとおりです。
 この本は、学園紛争どころではなく、スペイン内戦です。ナチス・ドイツの後押しを受けたフランコ軍と、ソ連の後押しも受けた共和国政府軍が戦争したのです。戦争ですから、当然のことながら双方大量の兵士が戦死しています。
 スペイン内戦は特異な戦争だった。スペイン人がスペイン人を相手に戦った内戦であり、敵味方の陣営が、それぞれ簡単には説明しきれないほど複雑な構成になっていた。
 一方の陣営は反乱を起こした軍人たちで、王制にとってかわった共和制政府に対してクーデターを仕掛けた。それを支持したのがカトリック教会や伝統的な保守勢力。そして、当時台頭しつつあったファシスト勢力のファランヘ党であった。
 もう一方の陣営は、共和国の合法性を擁護する勢力と社会革命を標榜する勢力だった。その中には、無政府主義者もソ連流の共産主義者もいた。そのほか、カタルーニャとバスクの自治を求める勢力も一員だった。
 20歳の著者は、大学生として共和国軍に身を投じた。1937年12月のこと。軍隊に一兵卒として入隊した。著者は学生のとき、カタルーニャ学生連盟の書記長だった。そして、コミュニスト・グループと戦った。しかし、アナキストは知らなかった。マドリッドから敗退してきた共和国軍がテルエルの戦いで激戦のあげくに敗れてしまった。
そのあとの戦線膠着状況で過ごす日々が淡々と描かれています。兵士の辛さが良く分かります。
 そして、テルエルの戦いで敗れたけれど激戦を戦い抜いた兵士たちが後方で休息しているとき、直ちに前線復帰命令が出され、それを拒否した兵士50人が銃殺されたという話が紹介されています。指揮官の命令違反は死刑だというわけです。戦争とはこんなにむごいものなのですね。勇敢な兵士を仲間が処刑してしまうというのはやりきれません。
スペイン内戦の内情を20歳の一兵士の目を通して知ることのできる貴重な本です。
 著者は今年91歳で、今なお、お元気のようです。

(2009年9月刊。3500円+税)

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