弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年11月 9日

建築する動物たち

生き物

著者 マイク・ハンセル、 出版 青土社

 ハキリアリというアリは、最近ではかなり有名です。南アメリカに住み、葉を切り取って巣に運び、専用のキノコ畑を栽培しているアリです。その巣は地下6メートル、800万匹の成虫と200~300万の卵や幼虫がいます。その巣にセメントを流しこんで型をとった写真が紹介されています。セメントを6.7トンも流しこんだのですが、そばにいる人間が小さくしか見えません。それほど、スケールの大きい巣なのです。
 シロアリの大きな塚がある。そこには、塚の表面を風が通ると、頂上部分では気圧が根元に比べて小さくなるから、空気が塚の上部から流れ出て、下のほうから侵入することになる。こうやって、塚の中の換気が実現する。うへーっ、す、すごいですね、これって……。
 ハチやアリといった社会性昆虫の巣作りにおける組織系統の実態がわかってきた。それは人間とは異なり、リーダーシップなるものが存在しない。責任者という個体や個体群はいない。階層的な構造や管理部門もない。
 たとえば、シロアリに理解や判断はほとんど要求されない。シロアリは仕事を探しまわるだけで、作業の方法については、自分のなかから、そしてつくる場所は建物自体から指令を受ける。いったん着手した仕事は、誰がやってもコミュニケーションの必要もないまま続いていくし、完成する。うむむ、そういうことなんですか……。不思議ですね。
 ニワシドリのメスにとって、配偶者の選択は、それを探す情報量においても決心するまでに注ぎ込む時間と労力においても複雑な過程である。メスは巣を作る前から、オスの不在の折を狙っていくつかのパワー(巣)を訪れて点検する。そして、次にオスがいるとき、そのうち、いくつかにもどって求愛ディスプレーを見る。しかし、まだ交尾しない。それから1週間ほどかけて産卵のための巣作りをしてから、前に訪れたパワーのいくつかに改めて戻って、再び、選ばれたオスの求愛を受ける。そして、最終的に、そのうちの一羽と交尾する。
 メスが慎重にオスを選ぶというのは、ゴリラやチンパンジーだけではないようです。もちろん、人間についても言えることでもあります。だから独身の男女が増えているのでしょうか……。
(2009年8月刊。2400円+税)

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