弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年9月20日

廃墟に乞う

司法(警察)

著者 佐々木 譲、 出版 文藝春秋

 うまいものです。いつ読んでもたいしたものだと感心します。ただ、今回は連作小説なので、謎解きがちょっとばかり早すぎて、少々物足りない感もありました。
 北海道警本部捜査一課の仙道孝司警部補は心の痛手を癒すために上司から休職を命じられています。休職中は新聞も読まず、温泉にでも入って何も考えたらいけないと医師から指示されているのでした。
 そんな仙道に、知人から次々に依頼があるのです。捜査権限もないのに、どうやって事件に関われるか。昔の同僚に教えを乞い、現場の捜査員たちから「邪魔してくれるな」と言われながらも、仙道は関係者を訪ねて歩き回るのでした。
 犯罪は捜査員の心までも傷つける。帯に書かれた言葉です。なるほどそうだろうなと思わせます。
 私もいま被疑者国選弁護事件を引き受け、毎日とまでは行きませんが、警察にしょっちゅう出入りしています。応対する警察官もいろいろです。臨機応変に対応してくれる人もいれば、四角四面の人もいます。
 一日中、灰色の部屋に缶詰になっている警察官について、哀れだなと感じることがあります。交際範囲が限定され、狭くて窮屈な階級社会のなかで、毎日とてもストレスがたまるばかりではないでしょうか。
 先日、私の面会した被疑者が厚手の長袖を着ていたので驚きました。冷房の効き過ぎで寒いからだと言います。恐らく留置所係員のために冷房をきかせているのでしょう。まさか、それって逃亡防止ではないでしょうね…。

(2009年7月刊。1600円+税)

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