弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年9月18日

リヤカーマン

社会

著者 長瀬 忠志、 出版 学研

 すごい人がいるものです。リヤカーを引っ張って日本縦断。これなら、まだ私にもできるかもしれません。しかし、南アメリカ、中国、そしてアフリカとなると、もう私の想像を飛んで、とんで、飛び越えてしまいます。よくぞ生命を失わなかったものです。それでも、リヤカーを盗られて中断したことが一度あり、インドネシアでは2人組の強盗につけ狙われて断念したといいます。だけど、それ以外はみんなやりとおしたというのです。すごい、すごすぎます。
 日本人女性はすごいと思っていましたが、日本人男性にもすごい人がいたものです。
 なんのためにこんな苦難な道を歩いたのか、歩いているのか、絶えず自問自答していたといいます。しかし、それはやりきったときにその答えが出たことになるのでしょうね、きっと。人生一度だけ。世界をテクテクテクテク、4万キロ歩いた日本人男性がいたことは、日本人の記憶に永く留めておくに値することではないでしょうか。
 リヤカーを引きながら、1時間に歩ける距離は5キロ。1日に8時間歩くと40キロ進む。余裕を持って1日30キロ進む計画を立てる。
 南米のアタカマ砂漠は、なんと52度の暑さ。いや、これは熱さというしかない。1日に6リットルの水を飲む。朝から9時間歩いて、すすんだ距離が6キロ。サハラ砂漠のなかでも1日12キロ歩いたというのに……。しかし、その次の日は、1日10時間40分かけて3キロしか進めなかった。しかし、さらに進んで高山病にかかると、1日わずか1キロしかすすめなかった……。
 リヤカーに積んである荷物の重さは140キロ。リヤカー自体の重さを含めると、200キロになる。これを引きながら。高度4000メートルの峠を登る。うへーっ、そ、そんな、よくも登れましたね。それも頼りは自分の足だけなんですからね……。
 日本縦断リヤカーマンの初旅は、1975年のこと。6月26日に北海道猿払村を出発し。70日目の9月3日に鹿児島県の佐多岬にゴールインした。これが19歳のとき。うむむ。すごいですね。やっぱり、若さですよね。
 ところが、最後のプロフィールを見ると、すごい、すごい。なんと言ったって、世界中をよくも歩いています。
 オーストラリア100日間、アフリカ216日間、韓国11日間、スリランカ9日間、台湾140日間、アフリカ376日間、マレーシア11日間、南インド18日間、フィリピン11日間、モンゴル25日間、タイ15日間、中国・タクラマカン砂漠11日間、アフリカ・カラハリ砂漠14日間、南アメリカ266日間、アマゾン41日間、南米・アタカマ砂漠35日間。
 いったい、この人の職業は何なのでしょう。そして、家族はいるのでしょうか……。
 高校教師であり、奥さんがいて、子どもも2人いるというのです。奥さんもきっと偉い人ですよね。読むと、きっと元気の湧き出る本です。
 庭に秋の虫たちが朝から賑やかに鳴いています。芙蓉の花が心を浮き立たせるピンクの花を咲かせました。酔芙蓉も咲いています。朝は純白の花が、午後になると酔ったように赤みを帯び、ついに濃い赤色の花に変わるのは、いつ見ても面白いものです。
 朝がおもついに終わりかけました。最近、フランス語でびっしりの絵ハガキが届きます。パリで語学留学中の娘からです。手書きでさっと書いているため、読めない字もありますが、元気に毎日勉強居ている様子が伝わってきます。私も、またフランスに語学留学したくなりました。40代初めに40日間、南仏のエクサンプロヴァンスに行ったことを懐かしく思い出します。

 
(2008年1月刊。1200円+税)

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