弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年9月11日

リンゴが教えてくれたこと

生き物

著者 木村 秋則、 出版 日経プレミアシリーズ

 先日、青森に行ってきました。リンゴが木になっているのを見ると、なんだか不思議な気がしてきます。どうしてこんなに重たいものが、たくさん木にぶら下がっているのだろうと疑問を抱いてしまいます。
 私の毎朝は、リンゴとニンジンそして青汁のジュースから始まります。もう何年も続けています。おかげで、健診を受けるたびに境界型糖尿病と指摘されていたのが、パッタリ止みました。ですから、リンゴを一年中、欠かさず食べているのです。
 この本を読んで、完全無農薬で育てた木村さんちのリンゴをぜひ味わってみたいと思いました。
 完全無農薬で育てながら、なんと虫もつかないというのです。信じられない話です。私は、庭でキャベツを完全無農薬で育てようとしたことがあります。でも、見事に完敗しました。世の中、そんな甘いものじゃありませんでした。毎日毎朝、青虫との戦いでしたが、まるで完全に敗北してしまったのです。
 写真を見ると、私より断然年長のように思われるのですが、なんと、私の一歳年下だったのでした。大変な苦労をしたうえ、農薬のせいで歯を悪くしてしまったので、年齢以上に老けて見えるようです。
 リンゴはバラ科の植物。葉がでんぷんを作る。
 青森県はリンゴの病害中に関する条例を定め、肥料や農薬等で徹底した防除管理をしていた。通告された畑の持ち主が、県の指導を無視すると、強制伐採、そして30万円の罰金が科せられた。農薬を使わない木村さんは、「かまど消し」つまり破産者扱いとなり、村八部同然となりました。
 害虫がたくさん害を及ぼすようになると、初めて益虫が出てくる。しかし、食べつくされることはなく、害虫も益虫もいっこうにずっと消えない環境にある。不思議な仕組みだ。
 木村さんは、リンゴの木に話しかけていったのです。声をかけなかったリンゴの木82本は枯れてしまったといいます。まさか……。本当のことでしょうか?
 無農薬栽培の基本は、園地を放任することではない。剪定、園地の手入れ、土づくりなど環境の整備をすることが大切だ。
 自然栽培で失敗しないためには、穴を掘って、10センチ刻みに温度計で測ること。自然の山では、地表の温度と地下50センチの温度には、ほとんど差がない。
 普通の畑は、20~30センチのところに硬盤層があるから、その冷えたところを破壊しなければならない。
 大規模農家でリンゴ園をやった人は、みんな失敗している。リンゴは、手作業の割合が大きく、人件費など経費がものすごくかかる。昔から、リンゴは労多く益なくといわれてきた。
 木村さんのリンゴのつるは柔軟性があり、しなやかで、落下しにくい。ちょっとくらいの風では、びくともしない。
 無農薬のリンゴづくりに長い間挑戦し、ドン底の生活を余儀なくされながらも、畑とリンゴの木をよくよく観察して、その泥沼から苦労してはい上がった木村さんの話には、感動的なものがありました。大したものです。

 サンモリッツの3日間は、快晴に恵まれました。それもそのはずです。サンモリッツの晴天日は、年間平均で322日もあるというのです。実は、ついた初日は夕方近く少し曇ってしまい、すぐ近くにあるピッツ・ネイルという3000メートルの高さの展望台は、ガスに包まれていました。
 ヤギの一種というアイベックスのブロンズ像の前で、たまたま一緒になった日本人夫婦に記念写真をとってもらいました。
 そして、サンモリッツは涼しいのです。というのも、標高1800メートルの高さにある街なのです。そこで、ガイドブックは次のように書いています。
 サンモリッツに着いてまずやるべきことは、深呼吸。サンモリッツの空気は、古くからシャンパン気候として有名だ。泡のなかで光の粒がはじけるような爽快感がある。
 いやあ、これが誇大広告とは思えない爽やかさが、たしかにサンモリッツ湖の周辺を歩いていると味わえるのでした。両手を大きく広げて、何度も深呼吸してしまいました。
 サンモリッツ湖を見下ろす高台にホテルがあります。カールトンホテルは明かりが見えません。閉鎖されている気配です。私はクルムというホテルに3泊しました。湖に面した部屋を注文すべきでした(もちろん割高になります)。反対側の部屋でもケーブルカーが見え、牛たちが急斜面で草を食んでいる光景が見え、また、ピサの社党のように全体が傾いた教会の塔を眺めることができ、負け惜しみのようですが、それなりの風景が眼前に広がっていました。
 私のブログにスイス・イタリアの風景写真を紹介しています。ぜひ、そちらものぞいてみてください。

(2009年6月刊。850円+税)

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