弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年9月 8日

メディア激震

社会

著者 古賀 純一郎、 出版 NTT出版

 長く共同通信にいて、今は大学教授をしている著者がメディアのあり方について警鐘を乱打している本です。
 マスコミが権力を監視する番犬に徹し、ジャーナリズムが円滑に機能することが民主主義にとって不可欠である。日本のため、世界のため、メディアが本来の任務を忘れずにいてほしい。そしてマスコミがその役割を十二分に果たしているかどうかを監視する番犬に今後はなりたい。
 著者は「あとがき」にこのように書いています。
 フランスのサルコジ大統領は2009年1月、新聞業界への支援策として7000万ユーロを支出することを表明した。18歳になったフランス国民に自分の読みたい新聞を1年間タダで宅配するというもの。該当者はフランス全土に80万人いる。この提案には、フランスのメディア業界がこぞって賛同した。
 日本でも新聞離れがいわれて久しい。若者の新聞購読率の低下は目を覆うばかり。ただし、ブログについては日本は世界一。ケータイでのメール送信は中高生などで日常化している。新聞ではなく、インターネットでのニュース閲覧に推移している。
 ネットの読者は既報記事に触手を動かさない。ネットで読まれているのは「詳報」のページである。
 2008年広告費の実績は、新聞が前年比12.5%減の8276億だったのに対して、ネット広告費は16.3%増の6983億円だった。ちなみに雑誌の広告費は4078億円である。ネット広告は急速にふくらんでいる。広告収入がこのようにネットへのシフトが著しいことから、日本テレビ、テレビ東京、テレビ朝日が軒並み赤字になっている。
 オーストラリア出身のメディア王、ルバート・マードックはイギリスの高級紙「タイムズ」を買収したあと、イギリス最強といわれていた労働組合を木っ端みじんにした。交渉に応じない組合員は全員解雇された。
 その結果、読者・視聴者不在で日本の政権におもねる姿勢で記事・番組が作られるようになった。
 いやあ、これって怖いことですね。先日(8月28日)、福岡で「表現の自由」をテーマとしたシンポジウムが開かれました。東大の高橋哲哉教授はNHKに絶望したと報告されていました。『女性戦犯法廷』について、自民党の圧力に屈したことを反省していないということです。ジャーナリストの原寿雄氏の、ジャーナリズム再生を訴える声に感動しました。マスコミ人には、あきらめることなく頑張ってほしいものです。

 コモに戻って駅から歩いてホテルに向かう途中に、遊覧船乗り場があり、人が群がっています。1時間で戻ってこれる遊覧船があることを窓口に確認してチケットを買いました。
 コモ湖遊覧船には、いくつものタイプがあるようです。なにしろコモ湖は広いのですから、それも当然でしょう。私の乗った遊覧船より大型の船もありましたし、もっと小さい船も出ていました。コモ湖の水面は静かです。岸辺には小さなホテルがいくつもあり、庭のテラスにテーブルが並べてありました。まだ食事の時間には早いので、気持よさそうにお茶を飲んでいる人を見かけるばかりです。
 ボートに乗って、のんびり魚釣りをしている男性、モーターボートに引っ張られながら水上スキーを楽しむ若者がいます。スキーの方は途中でこけてしまいましたが、なんとか這い上がってきました。
 いくつかの波止場で止まると、そのたびに乗客の一部が船を降り、また乗り込んできます。乗ったところに戻るという客だけではないようです。
 出発したときには曇り空だったのが、やがて薄日が射してきて、暑くなりました。風はそれほど強くありません。帽子が欲しいところです。甲板の戦闘の椅子に座って、移り変わる景色に見とれながら風に吹かれた1時間はあっという間に過ぎ、出発地点に戻りました。止まっているホテルは目の前にあります。

(2009年7月刊。2200円+税)

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