弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年8月21日

社長解任

司法

著者 大塚 和成・寺田 昌弘、 出版 毎日新聞社

 株主パワーの衝撃、というサブタイトルのついた本です。経験豊富な中堅弁護士による実践を踏まえた解説ですので、面白く読めて大変勉強にもなりました。
 上場企業の社長が、いわゆるモノ言う株主からの圧力によって株主総会の決議でクビになる例が多発している。株主によって社長がクビになる時代が到来した。しかも、投資ファンド株主である。
 なぜ、そんなことが起こるのか?
①大幅な営業不振、②有効な対策を取らない、経営者としての能力の欠如、③株主軽視の姿勢。
 アデランス、シャルレ、すかいらーく、日本精密、テークスグループなどの実例が分析されています。
 株主構成が変化している。不特定多数の株主投資家の手に渡った。投資家の多くは、株式市場から利益(リターン)を挙げることを目的として投資している。だから、もちつもたれつ、お互いさま、という意識に乏しい。ファンド株主は、モノ言う株主である。
 結論として、買収防衛策やホワイトナイト、非上場化には一定の効用はあるものの、社長がクビになることを絶対に防げるわけではない。
 買収防衛策の本来的目的は、時間稼ぎと情報の引き出しにあり、効用もその点に限られる。
 議決権行使書面と委任状とでは、前後を問わず、常に委任状が有効である。
 金券と引き換えに委任状を得ようとする行為は、会社法に反する。会社法120条1項は、株式会社は、何人に対しても、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしてはならないと規定している。
 うーん、ちっとも知りませんでした。少しだけ賢くなりました。

(2009年6月刊。952円+税)

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