弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年8月11日

デンマークの高齢者が世界一幸せなわけ

世界(ヨーロッパ)

著者 澤渡夏代ブラント、 出版 大月書店

 日本の団塊世代は700万人。デンマークの総人口はそれより少なくて545万人。デンマークの面積は九州と同じくらい。
 デンマークは、65歳から公的年金を受け取れるが、その前の60~64歳を対象とした準給与制度があるため、早目に退職する人が少なくない。毎年、15万人もの人が65歳を待たずに60~62歳で退職している。
 デンマークでは同じ屋根の下に複数の世代が同居することはまずない。お互いに独立して生活するのが自然だという考えが定着している。
 デンマークには、退職金という制度はない。老後は、それまでの生活レベルを維持できるだけの年金が支払われる。医療費もタダ。
 デンマークの女性の就労率は72%と高い。女性も1983年に納税する義務と権利を得て、経済的自立意識がさらに強まった。
 小学校から大学まで、すべての教育費は公費でまかなわれている。18歳以上で教育を受けている者には、返済義務のない学生援助金という生活費が支給される。デンマークの若者は、自立できる条件がどの国よりも整備されている。
 デンマークの若者は、向学心と適応力さえあれば、親の収入に関係なく、教育を受けることができる。
 デンマークでは、医療は公的医療が支えてくれるので、国民は病気になったときのことを心配して貯蓄しておく必要がない。介護も、ヘルパーや訪問看護が無料で支えてくれる。
 収入源が国民年金だけの高齢者は、自治体に対して暖房費の援助、メガネ、補聴器、薬品への援助ないし無料支給を申し込むことができる。
 デンマークでは、大型老人ホームは禁止されている。1988年の高齢者住宅法は、施設主義を排除した。1人1室、賃貸契約で完全な個人の住居に住む。室内にはトイレ・シャワーが完備されており、共同リビングのドアを開ければ、ケアスタッフがいる。入居のための待機期間は、平均して2か月。デンマークの元首相が、86歳になってプライエム(介護付き住宅)に入ったことが、デンマークの新聞で報道された。それほど、定着している。
 デンマークでは、生活が豊かならばいい仕事につながり、経済もよくなる。日本は、経済が良くなれば人々の生活も豊かになる。
 どちらを選ぶべきでしょうか。政権交代で民主党が政権をとっても、やっぱり経済優先でしょうね。だって民主党も日本経団連にすり寄るばかりで、まともに文句の一つも言えない体質ですから。小選挙区制になった弊害は、日本でも深刻です。やはり、考え方の多様性は国会にも反映すべきです。比例代表制、せめて昔のような中選挙区制にすべきだと私は考えています。
 昨日(10日)午前中にパリから帰ってきました。スイス(サンモリッツ)とイタリア(コモ)で夏休みをとったのです。スイスの森や山は大変よく整備されていて、遊歩道を大勢の人が家族連れで歩いていました。サンモリッツは高地にあり、大きな湖に面した静かな町でとても涼しく気持ちよく過ごすことができました。
 
(2009年3月刊。1700円+税)

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