弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年6月28日

マルクス資本論

社会

著者 門井 文雄、 出版 かもがわ出版

 理論劇画。はじめて聞く言葉です。つまり、単なるマンガ本ではないということです。うむむ、あの難解なことで有名な資本論をマンガに出来るのか。そして、マンガにしたら理解できるのか。ハムレットのような問いを突き付けられます。
 まあ、でも、マンガだとたしかに分かりやすいかな。そんな感触は得られます。
 私も資本論には、これまで少なくとも3度、挑戦しました。大学生時代に一度、そして弁護士になって時間をおいて二度、挑んでみました。でも、やっぱり私には難しい本でした。頭にするするっと入ってくるような本では決してありません。著者が、思いっきり、渾身の力をふりしぼって語っている。そんな迫力にみちみちた文章が、はてもなく切りもなく続くのです。ですから、私も意地になって、少なくと3度は全巻を読みとおしたわけです。だけど、残念ながら理解できたとはとうてい思えませんでした。
 マルクスが、生涯の友となったエンゲルスに出会ってまもなく書いた『共産党宣言』、これは私も大学1年生のときに読んで、なるほどと感心した覚えがあります。こちらは分かりやすい本でした。世の中の矛盾に目をつぶることなく、万国の労働者よ、団結して立ち上がれと呼び掛けていました。ぶるぶるっと、体中が震えてしまいました。非力でも、何とかしなくては、そう思いました。
 この理論劇画は、資本論第1巻の大意をなんとか伝えようと奮闘努力しています。それでも剰余価値とか、等価交換とか、やさしいようで難しい言葉が出てきます。そして、労働力と労働の違いが語られます。この点は、なんとなく分かった気になります。
 大洪水よ、我が亡きあとに来たれ。資本家は、ほおっておくと強欲な論理をむき出しにして、労働者を老いも若きも、女性までも非人間的扱いにして、踏みしだいてしまう。
 まるで、今の日本と同じように、マルクス時代のイギリスでは、労働者の生命、身体が悲惨な状態に置かれていました。そして、御手洗氏の率いる日本経団連は、イギリスの強欲資本家の完全な直系の子孫です。ともかく、我が身の繁栄しか考えていません。いったい、キャノンの製品を買うのはロボットだとでも考えている人でしょうか……。せめてヨーロッパ並みの、ルールと節度をもった資本主義社会であってほしいものです。老後は年金をもらって、ゆったり生活できる。これを望むのは当然のことではありませんか。それをできなくする社会を生み出している今の日本の政治は根本的に間違っています。プンプンプン。
 
(2009年4月刊。1300円+税)

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