弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年6月19日

マンガ蟹工船

日本史(近代)

著者 小林多喜二・藤生ゴオ、 出版 東銀座出版社

 30分で読める。大学生のための、という副題がついたマンガ本です。前から読んでみたいと思っていました。白樺湖に出かけたとき、やっと手に入れて読みました。
 もちろん、私は原作も読んでいます。でも、マンガって、すごいですね。よく出来ています。映画は前に見たようには思いますが、よく覚えていません。最近、リバイバル・ブームに乗って各地で上映されていますが、まだ残念ながら見ていません。その代わりにマンガを読んだのですが、それなりに視覚的イメージはつかめます。蟹工船のなかの悲惨な奴隷のような労働実態が、それなりに伝わってきます。解説をつけた人は、このマンガを読んでショックを受けた人は、ぜひ一度、一度読んだ人は、もう一度、原作小説をとくと味わってほしい、と注文をつけています。まさしく、そのとおりです。
 それにしても、今の日本で多くの若者が自分の置かれている状況は戦前の蟹工船で働かされていた労働者と似たようなものだと受け止めているという事実は、それこそ衝撃的な出来事です。それなのに、政府は、大企業の違法な派遣切りに対して、戸別の企業については論評を差し控えます、などと格好の良いことを国会で答弁して介入せず、野放しのままなのです。権力のやることって、戦前も戦後も変わらないというわけです。
 マスコミも、年越し派遣村こそ大々的に報道しましたが、企業で今やられていることについての追跡記事をまったく載せていません。本当に悲しくなります。ソマリア沖に派遣された自衛官の「活躍」ぶりを載せる前に、国内の若者の置かれている深刻な実態を紹介すべきではないでしょうか。そして、このことを総選挙の争点として大きく浮かび上がらせてほしいと思います。日本の若者が将来展望を持てなかったら、日本という国に将来はないと思いますよ。皆さん、ぜひ、このマンガを読んでみてください。
 
(2008年7月刊。571円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー