弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年6月15日

フランスの子育てが日本より10倍楽な理由

世界(フランス)

著者 横田 増生、 出版 洋泉社

 子どもにとって、きちんとした食事や十分な睡眠が成長に不可欠であるのと同じように、大人の注目や時間もまた、子どもの大切な栄養分なのだ。3歳までの子どもにとっては、身近にいる人間の注意や愛情を十分に受け取ることが必要なのだ。
 私も弁護士になってから35年が過ぎましたが、表情の乏しい大人の顔を見ると、きっと子どものころに親の愛情に満ちた声かけが少なかったのだろうな、と思うようになりました。親から愛情をたっぷり注ぎこまれた子どもは、大人になっても断然、その表情、とりわけ眼の輝きが違います。
 日本と違って、フランスでは出生率が再上昇している。それには3つの理由がある。一つは所得格差が小さいこと。二つは職場における男女格差が小さいため、女性が仕事か子育てかの二者択一を迫られることがないこと。三つには、週35時間労働にあらわれているように、労働時間が短いため、男女とも育児や家事に参加できること。
 ふむふむ、これはなるほど日本とは大違いです。
 フランスでは、女性が難なく仕事と子どもの両方を選ぶことが出来る。女性が子どもを産んでも、それまでとほとんど変わらない生き方をしていけるのがフランスなのである。
 うむむ、な、なるほど、ですね。さすがフランスです。
 フランスで子育てが前向きにとらえられる理由の一つに、政府の支援策によって子育ての負担が大きく軽減されることがある。とくに子どもが3人以上いる家族は、大家族として手厚い支援を受ける仕組みがある。家族手当の額が増えるだけでなく、交通機関や動物園、美術館、博物館などで割引を受けられる。うひゃあ、うらやましいですよ、これって。
 フランスでは、3歳から公立の学校に通える。
 ええーっ、保育園ではなく、学校なのですか…?
 フランスでは、ほぼ100%の子どもが3歳からエコル・マテルネルに通う。8時半から4時半まで、学費は無料。ちなみに、公立学校なら、大学卒業まで学費はタダ。
 うへーっ、なんと…タダ。しかも、今、2歳からにしたらどうかと議論されているというのです。これには、さすがにまいりました。
 フランスでは、日本のように夫が給料袋をそっくり妻に渡すようなことはしない。フランスの男性は、自分で稼いだお金は自分で管理する。だから、専業主婦になると、自分の自由になるお金がないことになる。ふむふむ、だからフランスの女性は働きたいのですね。
 子どもに対して支払われる養育手当の財源は、企業が労働者の賃金に5%を上乗せして納める税金である。つまり、労働者に年100万円の賃金を支払っていると、5万円を企業は国に支払うことになる。これって、日本でも考えていい制度ですよね。
 フランスの大統領選挙の投票率は、80%を超す。
ここですよね、日本との違いの決定的なところです。日本人の多くが、政治にあきらめてしまっています。フランスでは、そんなことはありません。政府の方針がおかしいと思うと、女子高生が一人で街頭でプラカードを手にしてデモ行進をして意思表示します。やがて、賛同者が増えて、いつのまにか道路を埋めるデモ行進になるのです。日本のような、連帯心の欠如というものがありません。みんな、明日は我が身と考えるのです。デモ行進で一時的な迷惑は受けるけれど、それよりもっと肝心なことがあるので、そちらを考えて連帯するわけです。

 私の事務所のホームページのブログで、「私の本棚」シリーズを始めました。私の読んだ本をジャンル別に本棚の写真をあわせて、順次、公開していきます。ぜひ、あわせてアクセスしてみてください。

(2009年3月刊。1400円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー