弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年6月 5日

戦争詐欺師

アメリカ

著者 菅原 出、 出版 講談社

 イラク侵攻作戦を指揮したトミー・フランクス中央軍司令官(当時)は、ダグラス・ファイス国防次官(当時)について、「地球上で最低のくず」と自伝の中でののしった。このようなブッシュ政権内の対立は、単なる路線対立ではなく、血なまぐさい内部抗争だと言った方がいい。
 うひゃあ、す、すごいですね。ここまで言うか、と思うほどの悪罵が投げつけられたんですね。それほどの怒りとストレスがブッシュ政権内にわだかまっていたのでしょう。
 コリン・パウエルはアメリカ陸軍の正統的な考え方の持ち主である。現代アメリカ陸軍の考え方は、ベトナム戦争の教訓を色濃く反映しており、軍事力の行使には非常に消極的である。軍事力の行使には明確な政治目標があること、国民の広い支持があること、そして何より圧倒的な兵力を投入することを原則とする。アメリカ陸軍の主流は、日本人が考える以上に、軍事力の行使に消極的である。なるほど、そうなんですね。
ネオコンとは、もともと、1960年代に極端に左傾化した民主党についていけなくなり、共和党の保守陣営に鞍替えしたタカ派の旧民主党員のことをさす。
 超タカ派のネオコンにとって、CIAのイメージは、軟弱、敵の脅威の見積もりが甘い、リベラルな学者、危険を犯さず、リスクをとらない官僚集団、という非常にネガティブなものばかりである。
 イラク戦争の前にパウエルもブッシュもイラクに大量破壊兵器があると高言した。しかし、まったくの間違いだった。なぜか?
 拷問によって特定の「証言」を引き出そうとした尋問官、ねつ造情報を売却して一攫千金をもくろんだ情報詐欺師、アメリカに恩を売って政治的立場の強化を図ろうとした外国情報機関、裕福な亡命生活を夢見て嘘に嘘を重ねたイラク人亡命者、自分たちの存在意義と自己正当化に固執した情報分析官など、「インテリジェンス」(情報)の世界でうごめく人間たちの実に生々しい、そしてきわめて人間的な営みが、そこにあった。
 イラク侵略戦争のとき、アメリカ軍の制服組は40万人の兵力の投入が必要だと考えた。そこでは戦闘と、その後の占領も考慮に入れられていた。しかし、ラムズフェルド国防長官(ネオコン)は、アフガン戦争型の小規模で機動的な部隊の運用、早さと奇抜さにもとづいた作戦に必要な7万5000人の兵員と考えていた。
 そして、将来のことなんて、誰にもわからないのだから、いちいち計画を立てていても仕方がないという乱暴な議論が横行していた。
 今なお、自爆テロの絶えないイラクの状況を考えると、アメリカによるイラク侵攻作戦と、それに加担し続けている日本政府の誤りは、ひどいものがあると思うのですが、日本の世論もマスコミも、その点では、あきらめが先行しているせいか、ほとんど盛り上がりません。残念です。
 
 東京に行ったとき、珍しく空き時間ができたので、有楽町近くの地下街に地方物産展があるのを見つけて、ふらふらと入ってみました。さすがは東京です。全国のちょっと気の利いたものが所狭しと並べられています。そんななかに、生せんべいというのを見つけました。なんだろう。そんなもの食べたことないぞ。手に取って見ると、ずっしりとしています。お餅みたいです。値段は手ごろですので、迷わず買いました。
 自宅で食べてみると、ちまきと同じ味がしました。もち米ではないので、生せんべいと名付けたのでしょうか……。
 愛知県半田市の特産品と書いてありました。
(2009年4月刊。1800円+税)

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