弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年5月27日

銃に恋して

アメリカ

著者 半沢 隆実、 出版 集英社新書

 武装するアメリカ市民というサブタイトルがついています。3億のアメリカ人に対して、2億丁もの銃があるというのです。アメリカって、異常なほど銃に頼った国ですよね。
 アメリカでは、銃による年間の死者は自殺を含めて3万人。毎日80人が亡くなっている。うち、殺人被害者は年に1万7000人ほど。1976年から2005年までの30年間で累計すると38万人が銃で殺された。
 2007年4月16日、バージニア工科大学乱射事件は、1人の学生(韓国出身)が30人を射殺した。だから、大学でも学生に銃で武装する権利を認めろという議論があるそうです。ぞっとします。大学内で銃撃戦をやりたいようですが、とんでもないことです。
アメリカは世界最大の武装社会。アメリカ国内の銃は年間450万丁ずつ増えている。2世帯に1丁の割合で銃を持っているが、これは世界最高の所有率だ。ちなみに、世界第2位はイスラム過激派で有名なイエメン。
アメリカでは、2002年から2006年にかけて、銃による殺人事件は発生率が13%も増加した。とりわけ、10代の若者が42%も増えた。とくに若い黒人男性の被害が深刻化している。
銃撃事件による被害についての損失をカウントすると、年間で1200億ドルにも及ぶと推計される。これは、ハリケーン「カトリーナ」の被害と同規模。つまり、アメリカは毎年、カトリーナ級の巨大災害を銃によって受けていることになる。
アメリカで銃規制を叫ぶと、その議員はヒトラーと呼ばれたり、共産主義者と呼ばれる、なんて、ひどい烙印でしょうか。
銃犯罪の被害者となるのは、都市部の住民であるが、彼らは銃規制を強く望んでいる。銃規制に反対するのは、地方や農村部の保守的な住民である。
白人の33%が自宅に銃を持っている。非白人では18%に過ぎない。
銃規制に反対する人々は、「日本のようになりたいか?」と問いかける。日本は警察ががんじがらめに市民を規制し、管理・監督している、自由なき国家だ。そんな国になりたくなかったら、銃を持つのを規制すべきではない、このように説くのです。
うへーっ、こ、これにはさすがの私もまいりました。もちろん日本が警察国家になるというのには賛成できません。でも、だからといって、それが銃規制反対の理由につかわれるというのは大変心外です。
銃があると人々は紳士的になるとか、安全が保たれるとか、まるで根拠のない議論だと思います。アメリカではライフルを買うのに何の規制もない。ただ拳銃を買うのに、ちょっとした証明書がいるだけ。それも第3者に買ってもらえばすむだけのこと。
日本はアメリカのようになってはいけないと思わせる本でした。
ところで、先日の新聞に、アメリカは日米安保条約があるので、日本が外国から万一攻撃されたら日本を守ってくれると日本人は考えているけれど、それは事実に反する、全くの幻想でしかない。防衛省の元高官がこのように語ったという記事がありました。アメリカが守ろうとしているのは、要するにアメリカであって、日本は、そのための捨石としてしか期待されていない。ところが、多くの日本人が依然としてアメリカに幻想を抱いており、一方的に、アメリカ軍は日本人を守ってくれる存在だと信じ切っています。おかしな話です。一刻も早く日本人は目を覚ますべきだと思います。
 
 白樺湖の周囲を歩いていると、影絵・切り絵美術館があります。つい先日亡くなった滝平二郎を思い出しながら、引き寄せられるようにして入ってみました。
 薄暗い室内に、柔らかい明りに浮きあがった影絵がたくさん並べられています。幻想的な絵が惜し気なく並んでいて、ふっと童心に帰ることができました。
 そして、部屋全体が天井まで一面の影絵になっているのです。残念なことに撮影禁止です。ですから、ぜひ、ここでそのイメージを紹介したいのですが、かないません。
 白樺湖周辺の四季折々の情景が、森の小人たちや女の子そしてみごとな草花…これらが後ろからの照明でほんのり照らし出され、目を奪われてしまいます。
 影絵をしっかり堪能したあと、部屋を出たところにある売店ではついつい買わずにはおれませんでした。
 そのあと出会った仲間に、あそこはいいよ、感動、感服したとワンフレーズの小泉みたいなことを言って誘ったことを半ばは後悔し、半ばは感動を分かち合いたいと思ったことでした。
(2009年2月刊。700円+税)

  • URL

カテゴリー

Backnumber

最近のエントリー