弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年4月12日

タクシー・ニューヨーク

アメリカ

著者 若宮 健、 出版 花伝社

 当代日米タクシー事情、というサブタイトルがついていて、アメリカはニューヨークで働く日本人ドライバーを紹介しつつ、日本のタクシー運転手の置かれている状況を自分の体験をまじえつつ、熱く紹介している本です。
 私の身近な人にタクシー運転手が何人もいますが、月収20万円を超すような人はほとんどお目にかかりません。長時間のきつい、危険な仕事なのに、賃金は劣悪です。
 ニューヨークでキャブの免許を取る時には、実技試験はない。日本では、普通免許を取得してから3年以上たっていないと資格がなく、試験は学科と実技の両方を受けなければいけない。
運転免許を取得するに必要な費用は、年齢(とし)にきちんと相応するということです。ですから、還暦を迎えた私なんか60万円もかかることになります。うへーっ、ブルブル、大学時代に免許をとっておいて本当に良かったと思います。
 ニューヨークは人口800万人で、市内を走るタクシーは1万3150台。東京都内のタクシーは、5万8000台。これは、ニューヨークの4倍となる。人口比を考えたら、とんでもなく東京のほうが多いわけです。なんでも規制緩和というのは大企業の利潤追求には便宜であっても、そこで働く人々にとっては地獄をもたらすものなのです。ところが、貧しい人ほど小泉政治を支持したという奇妙な現象がありました。
運賃収入は、地方都市で1日2万円台、埼玉で3万円台、横浜で4万円台、東京が5万円台である。福岡でも本当に低賃金で働いています。
 タクシー運転手は強盗にあう心配もある。そのうえ低賃金なのだ。それでもタクシー運転手は、独立が保障されるなどの理由から人気がある。世の中の矛盾の一つですね。
(2009年3月刊。1500円+税)

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