弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年3月18日

自治体クライシス

社会

著者 伯野 卓彦、 出版 講談社

 青森県大鰐(おおわに)町の第三セクターの無惨な状況には、息を呑むばかりです。
 26億円かけてつくられたリゾート施設は、わずか6年で閉鎖された。そこに至るまで金融機関から借りたお金は、最高時で150億円、2007年度時点でも70億円をこえる。そして、今、それを年3億円ずつ返済している。年間税収7億円の町が、である。完全に返済するのは50年ほど先のことになる。
 うひゃーっ、ど、どうしてこんなことになったのでしょうか……。
 第三セクターとは、国や地方自治体が民間企業と共同出資して設立した法人のこと。1980年代のバブル期に、「官の優れた部分と民の優れた部分をあわせもつ」として国が自治体に設立をすすめた。そのため全国各地に多くの第三セクターが生まれた。しかし、結局のところ、「官の悪い部分と民の悪い部分とをあわせもった」ケースが大半になってしまった。
 2007年6月に設立した自治体財政健全化法が、いま、地域と人々の暮らしを追い詰めている。
 5億円以上の債務超過に陥っている第三セクターと公社は97社ある。また、全国に100近くある自治体病院の7割以上が赤字であり、その累積赤字の総額は1兆8000億円にのぼる。
 多くの地方自治体は、損失補償契約を結んでいる。そして、この損失補償契約を結んでいる自治体は、赤字の第三セクターを存続させようが破綻させようが、大変な危機に陥りかねない。
 第三セクターが借金を抱えるようになった大きな要因の一つは、1980年代から90年代にかけて国が推し進めた「リゾート法」にある。
 国の勧めに安易に乗った自治体に責任があるのも当然だし、自治体が杜撰な開発計画を立案し、実行したのも事実だろう。しかし、国にも、制度をつくり、自治体にすすめ、政府系金融機関を通じて融資を行い、借金漬けにした責任はある。
 第三セクターの場合、会社は経営内容を公開し、それを議会がチェックしなければならない。しかし、自治体の側にはそんな発想すらなかった。
 総務省の調査によると、2006年3月末の段階で、全国489の第三セクターについて、総額2兆3000億円の損失補償契約が結ばれている。
 リゾート法が制定された1987年ころ、日本はアメリカから貿易不均衡を指摘され、それを解消するための内需拡大を強く求められていた。国はリゾート法に則って、第三セクターに対する融資を無利子か低利で行った。そのときの主な資金源は、NTTの民営化にともなう、1986年以降のNTT株の売却による莫大な利益だった。それを、政府系金融機関を通じて自治体に融資していく形をとった。
 自治体は破産法がなく、破産できない状況があった。
 2006年11月、川崎市の第三セクターが破産したとき、横浜地裁は損失補償契約にもとづく支出を違法と判断した。自治体が損失補償契約を結ぶこと自体を違法と認定したに等しい。画期的な判決である。
 りそな銀行が破たんしようとしたとき、国は1兆5000億円も負担した。それに比べたら少額のお金を使って何が悪いのか……。
 まったく同感です。でも、これも、日本の投票率が6割に満たないという政治的不信があり、それにあぐらをかいていることの当然の帰結でしょうね。やはり、私たち国民が怒りをもって立ち上がらないことには何も解決しませんよね。
(2009年2月刊。1600円+税)

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