弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年3月15日

ディファイナンス

ドイツ

著者 ネハマ・テック、 出版 ランダムハウス講談社

 ナチスに占領されたベラルーシでナチスと戦い、ユダヤ人1200人とともに森の中を生き抜いたユダヤ人3兄弟の話です。この実話が同じタイトルで映画となりましたので、私も福岡の映画館で観ました。この本を読むと、ユダヤ人3兄弟には問題行動もあったようですが、それでも同じユダヤ人といっても階層も考え方も違う1200人もの人々をまとめて生き延びたことは偉大な成果だったことは大いに評価されてよいと思いました。
 ユダヤ人もただナチスに殺されていった人たちだけではなく、銃を持って戦った人たちもいたわけです。でも、そこにも問題がありました。
 主人公のトゥヴィアは、他の何よりも重要なのは同胞(ユダヤ人)を助けることだ。20人のドイツ人を殺すことより、1人のユダヤ人の命を救うことのほうが大切だ、と強調した。
 しかし、人々は生き延びたいから森にやって来た。子どもや女、武器を持たない男たちの数が増えることは、お荷物が増えるということでもある。森の中に全員にいきわたるだけの食料が果たして確保されるのか。だから、役に立たない人たちを切り捨てたいと考えるものもいた。
 ところが、トゥヴィアは、武器を持っているか、戦闘力があるかどうかに関係なく、基地にたどり着いたあらゆるユダヤ人を迎え入れた。しかし、部隊の規模拡大は、内部の緊張を生み出した。
 メンバーの4分の3が年寄りと子供だった。武装した青年や武器を扱える人びとは20~30%だった。大半はあまり教育を受けていない人々だった。上流または中流階級の出身者はごく少数しかいなかった。この少数派の大半は、女性だった。
 ナチスの虐殺の初期のターゲットは、ユダヤ人エリートたちであり、ユダヤ人指導者の中で逃げ切れた人はごく一部だった。そして、彼らは都市生活者だったので、森の中での暮らしを選んだ人はほとんどいなかった。
 食事について、原則として全員が同じ分量と種類の食事がもらえるはずだったが、実際にはそうはいかなかった。2種類の炊事場が作られ、一つは司令部と3兄弟一族用、そしてもう一つは残りの人々用とされた。
 公平でいるのはとても難しかった。3兄弟と家族は、ロマノフ王朝と呼ばれていた。そんな証言もある。
 単純で平凡な若者たちが、戦争前なら手の届かない存在だった社会的地位を持つ女性をたやすく手に入れることができた。女性たちは自分を守ってくれる男性と出会い、生き延びる道を選んだ。
ユダヤ人部隊は、ソ連のパルチザンとも提携していたが、反ユダヤ主義の影響を受けているソ連のパルチザンとは、かなりの緊張関係にもあった。この点は、映画にも反映されています。
 ポーランド人のパルチザンは、ソ連の支配下にはいるのを嫌った。ナチスと戦う点では一致しても、内部には複雑な状況があった。こんなこともこの本を読むとよく分かります。
 そんな難しいなかで、よくぞ1200人ものユダヤ人がまとまって生き延びたものです。工場があり、学校があり、刑務所まであったというのです。たいしたものです。

(2009年1月刊。1500円+税)

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