弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年2月25日

チェ・ゲバラ、ふたたび旅へ

アメリカ

著者:エルネスト・チェ・ゲバラ、 発行:現代企画室

 チェ・ゲバラがキューバ革命戦争に参加する前、南アメリカから中部アメリカを旅行した時の日記が再現されています。いかにも青年らしい無鉄砲な旅の日記です。
 旅は、1953年7月に始まります。
 ありとあらゆる種類の失敗をやりつくし、相変わらず無駄な期待ばかりさせられている。ぼくは間違いなく楽観的運命論者タイプだ。最近はぜん息に悩まされて過ごしている……。
 怠惰という、ぼくの悪癖がたいして改善されないまま、また一日が過ぎた。
 チェ・ゲバラは1955年7月末、メキシコ・シティでフィデル・カストロに出会いました。このときのことを日記に次のように書いています。
 政治的な出来事といえば、キューバ人革命家のフィデル・カストロに出会ったこと。若くて聡明で、非常に自信家であり、普通では考えられないような勇敢さをもった青年だ。お互いいに気があったと思う。
 この本には、旅行中にゲバラ自身が撮った写真、そしてゲバラの写った写真がたくさん紹介されています。ゲバラのとった写真を見ると、ゲバラが中南米の古代歴史に深い関心を持っていたことが分かります。また、写真のゲバラは本当に好青年です。眼が輝いています。知的魅力にあふれています。幼いころからのぜん息もちだったので、それが悩みだったようです。
 母親への手紙のなかで、ゲバラは次のように書いています。
 知ってのとおり、ぼくはいつでも思い切った決断をするのが好きで、……。ぼくのアメリカ嫌いは1グラムも減っていないけど、ニューヨークぐらいはよく知っておきたいですね。それでどういう結果になるかなんてぜんぜん恐くないし、絶対、入国するときと同じくらい反ヤンキー主義のままで出てきますよ(もし入国できればの話だけど)。
 次は、友人に対する手紙です(1956年10月)。
 だいぶ前に、何人かの革命キューバ人青年たちに、ぼくの医学の知識で運動を支援してくれないかと誘われたので、引き受けました。なぜって、今さら言うまでもないことだと思うけど、これこそぼくがやりたかった仕事なんです。
 先日、福岡でチェ・ゲバラを描いた映画の第一弾を観ました。キューバ革命戦争に従事し、山の中のゲリラ戦が次第に勝利していき、ついに町に攻め込み、ついに首都を開放していく過程をたどっています。戦闘場面が多く、ゲバラの内面の紹介が少ない気はしましたが、困難なゲリラ戦のなかでも本を読んで学習を忘れないゲバラはさすがでした。
 そして、印象深いのは、キューバ解放後、ニューヨークの国連本会議場での演説シーンです。「祖国か死か」と叫んで演説は終わるのですが、そのあと、中南米各国代表から批判されます。それに対して、ゲバラが一つひとつ冷静に的確な反論を展開していくのです。見事なものです。すごいなと思いました。

(2008年9月刊。933円+税)

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