弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2009年2月 6日

黄金郷伝説

アメリカ

著者:山田 篤美、 発行:中公新書

 まったくの偶然ですが、イギリスのサー・ウォルター・ローリーについて書かれた本を同じころに読みました。エリザベス女王のころ、イギリスはスペインとはりあってアメリカ大陸へ進出(侵略)しようと必死だったのですね。そのころ、イギリス側で活躍した一人が、このサー・ウォルター・ローリーだったのです。結局、エルドラド(黄金郷)を発見することができず、失意のうちにイギリスに戻って、逮捕され、スペインの要求どおりに死刑に処せられてしまうのでした。
 コロンブスのアメリカ大陸発見というのは日本では定着した考えです(私の高校生時代、教科書でそう習いました。今でもそうだと思います)。しかし、アメリカ大陸にはそれ以前も多くの「インディアン」が平和のうちに生活していたのだから、「発見」というのはおかしいと指摘されています。私も、なるほど、と思います。それは、ともかくとして、コロンブスは
1498年の第3回航海で南米大陸のベネズエラに到達しました。そうです。今、反アメリカで健闘しているチャベス大統領のいるベネズエラなのです。
 コロンブスが他の人と違っていたのは、地球球体論を取り入れ、東方世界に行くために西を目ざした逆転の発想だ。コロンブスの計算では、西に向かうとまず日本(ジパング)に到達し、その後に中国に到達できると考えた。目ざす財宝は真珠と黄金である。
 コロンブスの到達を祝う記念日は、今では先住民の受難がはじまった日と考えられている。この日は、中南米の各地で「民族の日」と呼ばれ、民族の権利回復を求める先住民族によるデモや集会が行われている。
 さて、ローリーである。ローリーは、エリザベス女王の近衛隊長に就任し、出世していった。その本質は、エルドラド探検隊であり、海賊、つまり侵略者であった。
 当時、イギリスはスペインと敵対関係にあった。スペイン船団を襲撃するイギリス人は国から特命状をもらっていたので、単なる海賊ではなく、私掠船(しりゃくせん)と呼ばれていた。ローリーには、キリスト教徒の君主が所有していない土地を征服する権利が与えられていた。だから、その地を未発見の地にカモフラージュする必要があった。そこで、スペインが発見したグアヤナではない、別のギアナという地方を発見したと言いつのった。
 ローリーたちは発見できなかったが、ベネズエラには、本当に金を産出する地方があった。これが今の悲劇をもたらしている。
 大航海時代から続く大土地所有のルールでは、先住民しかいない土地は誰もいない土地であり、最初に到着したヨーロッパ人が、その地を領有することができた。
 いやあ、、これって、よく考えたら、とんでもないルールですよね。私も高校時代まで習った世界史で、このことをまったく疑いもせず、ただひたすら暗記していました(日本史も世界史も私の得意科目でした)。しかし、先住民がいるのに、なぜ、突然現れた「先進国」が勝手に自分の領土だと宣言できるのでしょうか。おかしなことです。人間みな平等なんですからね。

(2008年9月刊。940円+税)

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