弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年10月 8日

サブプライムを売った男の告白

アメリカ

著者:リチャード・ビトナー、 発行:ダイヤモンド社

 アメリカのサブプライムローンをめぐる破綻が全世界の経済を大きく揺り動かしています。この本は、サブプライムローンの実体が、いかにインチキであったか、体験を通して暴露しています。
 アメリカでは、夫婦の一方が病気になれば、たちまち経済的に破綻してしまう。国民皆保険制度がなく、営利企業である保険会社に加入できなければ、高額の自費負担を余儀なくされるからだ。
 サブプライムローンの借り手の大半、少なくとも80%の人々は期日通りに返済している。滞納件数がかなり多いのは明らかだが、5人のうち4人は返済している。
 サブプライムローンの借り手は、伝統的な住宅ローンなどを借りる資格のない人々である。信用度は良くない。前にローン返済が延滞したり、不履行になったりした事実がある。だから、借り手はリスクの増加と相殺するため、より高い利息やローン手数料を支払わされる。
 クレジットスコアというのがある。300点から850点までの範囲がある。
 2000年までに、アメリカでは、25万人以上のモーゲージブローカーが活動していた。モーゲージブローカーにライセンスを要求する州は少なかったので、業界への参入障壁は低かった。
 住宅ローンで不正行為が横行した。本来なら住宅ローンを借りる資格のない借り手が融資を受けた。たとえば、居住物件のはずが、投資物件であった。借り手が友人や親類の会社で勤めているとして職歴をデッチ上げる。ローンに関わる重要情報を隠してしまう。
 信用度の高い人が、第三者に自分の借入の実績を使わせ、その都度、手数料をもらうということもあった。このような「信用強化」は人を欺くものである。
 不動産鑑定士が価値以上の評価を出すこともある。あらゆる数字をぎりぎりまで操作して評価額の数字を導き出す。借り手は望みのものを手に入れ、レンダーとブローカーは手数料を稼ぎ、投資家は優良債権を受け取ることになる。
 しかし、こんなことは長続きはしない。いずれは破綻する。
 アメリカの非金融企業で、最上級のトリプルAに値するのは、ほんの一握りの企業にすぎない。それなのに、格付けされた債務担保証券の90%がトリプルAというタイトルを授けられている。
 これから数年のうちに、200万人もの人々が差し押さえによって住居を失う危険がある。
 抵当流れのピークは2009年だと予測されている。総件数は200万件に達する。そして、ラスベガスやマイアミという住宅に最高額が付けられてきた町でも、今後の数年のうちに住宅価値は40〜50%も下がるという推測がある。 
 今、アメリカ発の世界恐慌が起きるのではないかと、みんなが心配しています。アフガニスタンやイラクへ戦争を仕掛けたアメリカの国内経済がガタガタになっているのです。それなのに、大企業の救済・優遇措置だけはしっかりとろうとしています。アメリカの国民が猛反発したため、一度は国会で否決されました。ことは日本にも大きく響いて来る問題です。対岸の火事だといってすまされないことだと思います。
(2008年7月刊。1600円+税)

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