弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年9月 3日

超巨大旅客機エアバス380

社会

著者:杉浦一機、出版社:平凡社新書
 空港に行くたびに自分の乗る飛行機に乗りこもうとする乗客の多さに驚きます。こんなにたくさんの乗客を乗せて、こんなに大きい飛行機がよくも空を飛べるものだと呆れてしまうほどです。
 そんな不信から、私のよく知る弁護士に飛行機に乗らない主義を貫徹している人がいます。でも、そうは言っても、東京に行くのに新幹線とか夜行寝台列車というわけにはいきません。坂本九ちゃんが乗っていた日航ジャンボ機の墜落事故の原因は真相が解明されたとは今も私は信じていませんが、とりあえずJALやANAを信頼して乗っています。でも、格安飛行機にだけは絶対に乗りたくありません。整備を本当に手抜きしていないのか不安でならないからです。
 昨今はエコノミークラスの運賃は安売りが激しく、利益幅が薄い。エコノミー客15〜16人を運んで、ようやくビジネス客1人の利益に相当する。そのため、国際線の標準的な収益構造は、エコノミー客で採算をとり、上位クラス客で利益を出す形になっている。したがって、ファーストやビジネスクラス客の集客に懸命になっている。
 JALもANAも、収容人数は多いものの燃料消費も多いジャンボ機(3クラス標準で416席)を長距離線からはずし、経済性のよい双発機のB777(3クラス標準で365席)に切り替えている。その結果、定員は1便あたり50人前後も減るが、燃料消費が少なく効率が良いため、利益は2倍にもなる。もちろん、減らされるのはエコノミー席で、利益重視からエコノミー客が切り捨てられつつある。
 ビジネスクラスに若い日本人女性が乗っているのをよく見かけます。よほど裕福な家庭なんでしょうね。若いうちはエコノミー席で苦労した方がいいと思うんですが・・・。
 地上では通常の機体も高空では膨張し、膨張と就職を繰り返すことによって金属は早く疲労し、クラック(亀裂)の原因となる。
 複合材が重量の3割に使用されているエアバス380は、最大旅客数853人で自重は274トン。収容客数は5.92倍に増加しているのに、自重は4.57倍にとどまっている。
 チタンは、重さがアルミの1.76倍、鉄の6割ながら、強度はアルミの6倍、鉄の2倍ある。毎年、世界で生産されるチタン9万トンの3分の2は航空機産業で消費される。ジャンボ機のエンジンには、4基合計で4.5トンものチタン(合金をふくむ)が使われている。ちなみに、日本は世界のチタンの3分の1を生産している。
 800人以上もの乗客と大量の貨物を載せ、560トンもの重量で離陸する巨大な機体を、わずか2人のパイロットで操縦するのは驚きだ。これには操縦装置の自動化、電子化技術が大いに貢献している。
 1927年のリンドバーグの初の大西洋横断飛行のときには、33時間29分のあいだ片時も操縦桿から手を離せなかった。いやあ、まさに超人的なことですよね。
 人間が生活するのに快適な湿度は40〜50%だが、現在の機内はなるべく乾燥させている。湿気によって配管に結露したり、機体や部品が錆びることを防ぐためだ。そのため、現在の機内はサハラ砂漠よりも乾燥した6〜8%の湿度になっている。乗客の身体からは、1時間に80cc(11.5時間で1リットル)もの水分が奪われる。
 A380では、湿度を12〜15%に高めることになっている。水分不足がもたらすエコノミー症候群の予防には効果がありそうだ。
 ちなみに、現行の機種でも、3〜4分ごとに新鮮な空気に入れ替わっている。
 A380をJALが採用する目はなく、可能性があるのはANAのみ。JALはボーイングから逃れられないようです。
 飛行機によく乗る私からすれば、いろんなサービスがありましたが、何よりのサービスは絶対安全です。どんなことがあっても落っこちないこと、それだけです。これをくれぐれも飛行機会社にはお願いします。安かろう悪かろう、整備は手抜きというのでは困るのです。その面の規制緩和はぜひやめて下さい。
(2008年3月刊。760円+税)

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