弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年8月12日

デキのいい犬、わるい犬、

著者:スタンレー・コレン、出版社:文春文庫
 名犬ラッシーのテレビ映画は、私も子どものころ、よく観ました。そのラッシーは、7代にわたって雄のコリーだった。雌のふりをさせられていただけだった。雄のほうが雌より体格も大きく臆病なところがないためだった。観客は、みな見事にだまされた。
 ラジオドラマがつくられたとき、吠えたのは本物の犬だったが、クンクン啼いたり、ハアハアいったり、威嚇するようにうなる声は、すべて人間の役者が受けもった。まあ、なんと犬の声優がいたというわけなんですね。
 もっとも古い家犬の確実な証拠として残っている化石は、1万4000年前のもの。旧石器時代人が連れていた。イヌ科動物の多くが、排泄のあと、近くの地面をひっかく。これは足の裏から分泌される汗に似た分泌物が、情報量は少なくても多様な情報を提供するためのもの。
 家犬は子犬的特徴をもっている。そして従順である。一生、子犬のように垂れ耳のままの犬も多い。
 犬には、自分の能力の可能性と限界を知るという自己認識能力がある。対自的能力ともいう。高すぎる壁、広すぎる溝を前にして跳躍をためらい、拒否する犬は、この種の知能を示している。
 犬は65種類の言葉と25種類の合図・身ぶりを理解する。つまり、受容できる言語は90種類である。犬の発信する言語は25種類の声と35種類の身体の表情がある。ただし、構文や文法はつかえない。
 服従に最適な犬は、頭の鈍いゴールデン・レトリバー。ゴールデンは、人間から受けた指令を理解し、人間を喜ばせたい一心でそれをこなす。飽きっぽくなく、すぐに気を散らすこともない。目の前のことを詮索しようとせず、反応の仕方を変えることもなく、人間が最初に教えたとおりを正確に実行しようとする。
 テリアが服従訓練に良い成績をあげられないのは、テリアが唯我独尊に改良されてきたため。自分たちの行動を人間がどう思うか気にもとめない。だから、服従訓練競技の会場では活躍できない。しかし、テリアはとても利口である。なるほど、なるほど。人間の言いなりになるかどうかと、犬の知能は別の次元なんですね。
 子犬は生後7週間ぐらいは、一腹子の兄弟たちと一緒にいたほうがいい。この期間に、犬らしさが育成され、犬同士を仲間と認め、ほかの犬との関わりに必要な基本行動が学びとる。次の5週間のあいだに人間と十分なふれあいをもてば、犬は人間を群れのメンバーとして受け入れる。こうして、犬は人間と円滑な相互関係をもつことができる。
 必要なことは、折りにふれて犬を1、2分間ほど拘束すること。犬に優しく話しかけながら、その口吻を数秒のあいだ手で閉じさせる。そして犬を倒して横にさせ、まる1分間は、そのままの姿勢をとらせる。そのあいだ、犬が四肢を上げないときには、脚を床から離させ、より服従的な姿勢をとらせるか、犬を仰向けにして四肢が上を向くようにさせる。この間、犬の目をまっすぐに見すえる。犬が顔をそむけたら練習を終わりにして、犬が尻尾をふり始めるまで軽く遊んでやる。
 遊びの最中に注意しなくてはいけないのは、犬が攻撃の真似をしたり牙を立てようとしたら、絶対にやめさせることである。咬みつくのを挑発するように、犬の顔の前で指をひらひらさせたりしてはいけない。綱引きもしないほうがいい。この遊びは犬の支配性を助長し、性格上、良くない影響を与えてしまう。
 犬は年をとってからでも学習できる。これって、人間と同じですよね。
 タイトルの軽さに反して、この本に書かれていることはすごく真面目なことですし、大いに勉強になります。私も子どもたちと一緒に犬を飼っていましたが、この本を読むと反省させられることばかりです。でも、旅行に行きたいので、もう犬を飼うことはあきらめています。
(2000年9月刊。657円+税)

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