弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年8月12日

戦争熱中症候群

アメリカ

著者:薄井雅子、出版社:新日本出版社
 アメリカの元海兵隊少将が次のように言った言葉は有名です。この言葉は何回引用しても、そのとおりだと、ついつい首が上下に動いてしまいます。
 戦争は、やくざな金もうけだ。いつもそうだった。たぶん、これはもっとも古くからあり、苦もなく最大の利益を得る、もっともあこぎな商売であるのは確かだ。世界をまたにかけて稼ぎ、利益はドルで勘定するが、損失は生命で勘定する。自分は33年間、海兵隊で過ごした。その間、大企業やウォール・ストリート、銀行家のための高級な殺し屋として。資本主義のために働くヤクザだった。
 スメドラー・バトラーという元少将が1933年、1935年に語った言葉です。
 イラク、アフガニスタンに派兵された15万5000人の女性兵士のうち、1割をこす1万6000人がシングル・マザーである。兵士になるしか収入がないというシングル・マザーは多い。
 軍隊に入ると、初任給の月給は1250ドル(14万円)。つまらない田舎から出て独立し、違う世界を見たいという若者にとって魅力このうえない条件だ。
 CNNテレビの社長は、戦争報道ではバランスをとれ、アフガニスタン民衆の被害にばかり焦点をあてるのではなく、なぜアメリカが攻撃しているのか、その理由を視聴者に思い起こさせるようにと社内に指示した。この「バランス報道」の結果、アメリカの攻撃にさらされた現地の人々の被害はアメリカではほとんど放映されない。少しでも被害の生々しさが伝わると、怒りの電話やメールが殺到する。兵士を出している家族からすると、命がけで戦っている夫や父を悪者にするのか、という怒りがわくからだ。
 大規模な反戦運動のニュースが一面トップに来ることもない。
 これって、日本でも同じことですよね。被害の実情はおろか、サマワ(イラク)の自衛隊基地の実情すらほとんと紹介されることがありませんでした。政府が報道を禁止したからです。日本のマスコミは政府の言いなりでした。日本人のまじめな若者が人質になったときには「自己責任」を大々的に喧伝するばかりで、本当にガッカリさせられました。
 そして、日本のささやかな反戦集会やデモ行進が記事になることはめったにありません。無力感をマスコミが植えつけ、広めています。
 先日、福岡県弁護士会が福岡市内でペシャワール会現地代表の中村哲医師を招いて講演会を開いても、テレビ局はどこも取材に来ませんでした。テレビは、ひたすら、面白おかしくという路線をとり、シリアス番組はどんどん少なくなっています。
 イラクでアメリカの民間軍事会社の一つであるブラックウォーター会社がイラク人を殺しても訴追されないことになっている。ひえーっ、これって重大な主権侵害ですよね。
 アメリカの連邦予算の半分を軍事費が占めている。アメリカには軍事にお金をつぎこみ、巨大な軍隊組織と軍需産業をつくれば、豊かな経済を維持できるという神話がある。
 軍事中心の政治・経済が長く続いてきた結果、アメリカ国内の産業は直接・間接に軍需産業への依存を強めている。ミネソタ州にあるアライント・テクニステムズは、劣化ウラン弾やクラスター爆弾を清算しているが、従業員が全米に1万6000人いる。その反対に自動車をつくるフォードの工場はかつて1万人いた労働者が今や数千人に減り、やがて閉鎖されることが決まっている。
 アメリカの帰還兵が2005年に6256人も自殺した。20〜24歳の帰還兵の自殺率は、同年代のそれの4倍。
 2005年、ホームレスの退役軍人が20万人近くいる。推定74万人をこえるホームレス人口の4分の1を占めている。
 イラク開戦以来のアメリカ兵の死者は4000人をこえました。もちろん、イラク人の死者は、ケタが2つも違います。それでも、これはアメリカ社会に大きなマイナスをもたらすに違いありません。戦場の狂気を社会にもちこむことになるからです。アメリカって、本当に厭な国です。そんなアメリカにいつもいつも犬のように尻尾をふり続けている日本って、ホント馬鹿みたいな国ですね。
(2008年3月刊。1600円+税)

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