弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年6月23日

テレビ番組事始め

社会

著者:志賀信夫、出版社:NHK出版
 今や、まったくテレビを見ない私ですが、もちろん高校生のときまではテレビをよく見ていました。そのころのなつかしいテレビ番組が登場する本です。まさしく労作です。2段組で560頁もある大作です。それでも語り尽くしたというわけではありません。
 私にとって印象に残るテレビ番組のナンバーワンといえば、なんといっても『おはなはん』です。樫山文枝です。テーマソングも良かったですね。大学受験勉強にいそしんでいましたが、ほんわか元気の出てくるテレビ番組でした。ただし、残念なことにこの本には紹介されていません。
 『紅白歌合戦』については、たしか私の高校2年生のときだったと思います。これって、日本を総白痴化する番組だと指摘するエッセーを読み、なるほどそのとおりだと思い、それ以降はプッツリみるのを止めました。それまでは楽しみにみていましたけど・・・。
 ですから、時代が下がりますけど、『8時だヨ!全員集合』とか、私は横目で眺めたことはありますが、一度もみたことはありません。なんで、大のおとなまで、こんなバカバカしい番組をみて無為に時間を費やすのかなあと不思議に思ってきました(今も、おバカ・キャラが受けているというのを聞いて、信じられません)。
 私の小学生のころに始まったのが『バス通り裏』です。十朱幸代が高校1年生のときから20歳まで出演していたそうです。本番でセリフを忘れて、「なんだっけ」と言ったという話は、私も聞いたことがあります。岩下志麻がその1歳年下だったというのを初めて知りました。高校生だった2人は、番組収録のあと、アイススケートに行ったり、遊園地で遊んでいたのだそうです。
 いかにもほんわかとしたホームドラマでした。庶民の日常生活がよく描けていました。
 そして、『お笑い三人組』です。江戸屋猫八、一竜斎貞鳳、三遊亭小金馬のトリオが出て、楠トシエ、音羽美子、桜京美のチャキチャキ三人娘が輝いていました。武智豊子のおばちゃん役も印象に残っています。登場人物のセリフは、いかにも自然で、即興のアドリブが盛りだくさんでした。と思っていたら、すべてのセリフが台本にあったというのです。それくらい、脚本家が楽屋で登場人物をよく観察していたということなのです。
 そして、『事件記者』です。これは、中学・高校とみていたように思います。8年ほど続いたそうです。永井智雄の相沢キャップ。なんて、今もしびれます。イナちゃん(滝田祐介)、ベーさん(原保美)など、鮮明に印象づけられています。小料理屋のママさん(坪内美詠子)にも、高校生の私は、ひそかに色気を感じていました。
 火曜日の夜は、『ジェスチャー』『お笑い三人組』『事件記者』と続いて、35〜40%という高視聴率を保持していた。そうでしょう、そうでしょう。私もずっとみていました。
 『チロリン村とくるみの木』もみていました。黒柳徹子のピーナツのピー子、タマネギのトンペイ(横山道代)、などを覚えています。そして、そのあとが『ひょっこりひょうたん島』です。いやあ、これはすごかったですね。作者の井上ひさしは29歳だったそうです。ひゃあ、若かったんですね。でも、これって、ホント、社会的なストーリーですよ。いろんな肌あいや癖をもった人間たちが一緒に仲良く漂流する。お互いの違いを認めあいながら、異質なものを排除せずに団結していく。それがテーマなのです。
 大人からすると、子どもにはあまり見せたくないと思うほど、きわめてリアルに世の中の状況が描写されていた。うむむ、そうだったんですか。さすがは、『九条の会』の呼びかけ人でもある井上ひさしです。私の、もっとも尊敬する作家です。
(2008年2月刊。3000円+税)

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