弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年5月12日

いつか僕もアリの巣に

著者:大河原恭祐、出版社:ポプラ社
 アリは真社会性昆虫と呼ばれている。真社会性というのは、働きアリのように自分で子どもを生まないで仲間を助ける存在がいることが特徴。この働きアリのような存在を学術用語で「不妊カースト」と呼ぶ。女王アリのように集団の中で子どもを産む存在を学術的には「繁殖カースト」と呼ぶ。つまり、真社会性昆虫は、不妊カーストと繁殖カーストから成り立っている。
 世界中にアリは1万種以上いる。日本には275種。ヨーロッパにはアリの種類が少ない。公園などによく見かけるクロヤマアリは、働きアリは8000〜1万6000匹。大きなコロニーでは、働きアリは100万匹単位となる。
 世界でもっとも巨大なアリのコロニーは、意外にも日本にある。北海道石狩海岸にあるエゾアカヤマアリのコロニーは、巣が4万5000個、10キロにわたって延々と続いている。すべて一つのコロニーで、働きアリの数は少なく見積もっても数千万匹に及ぶ。
 ひえーっ、驚きました。どうして、北海道の海岸に世界最大のアリのコロニーがあるのでしょうか・・・。
 アリは、人間社会と違って年功序列ではない。人間では年齢とともに管理職などの優遇された役職になることが多いけれど、アリではまったく反対。羽化してまもない若い働きアリは巣内の内勤の仕事に従事し、年を取ったアリの方が危険な仕事をさせられるのは、コロニーを維持するため。
 ふむふむ、なるほど、そういうことなんですか・・・。
 アリは不眠不休で働いているように見えるが、実は、しっかり睡眠をとっている。アリのなかにも「怠け者」がいる。しかし、コロニーの働きアリを減らして、労働力不足の環境をつくると、怠け者だったアリも急に働き始める。
 もっとも小さいアリは体長が1.5ミリ。もっとも大きいアリは、体長が3センチにもなる。
 シロアリはゴキブリに近い。シロアリには女王アリと王アリがいて、おしどり夫婦だ。シロアリには、オスとメスの両方が混ざっている。アリの働きアリはメスだけ。
 アリの体の表面には、多くの外分泌腺があり、さまざまな機能をもつ化学物質を分泌する。胸にある分泌腺からは抗菌物質を出し、巣の中に雑菌が沸かないように消毒している。アゴには、おおあご腺という分泌腺があり、ここから仲間に危険を知らせる警戒フェロモンを発する。
 アリは、かなりの頻度で、巣を移動する。むしろ、固定的な立派な巣をつくるアリは全体からすると少数派だ。そもそもアリはハチから進化してきた。アリの多くはハチと同じで腹部に毒針をもっている。
 うむむ、なーるほど、だからよくにているのですね。
 アリは意外に食料として利用されている。オーストラリアのアボリジニは、ツムギアリを食料とする。
 メスアリが女王になるか働きアリになるかは、実は成長する過程、つまり育ちで決まる。生まれながらの女王というのはいない。エサを多くもらってよく発育したメスの幼虫が女王に成長する。
 アリたちが女王を決めるときにはルールにのっとった決闘をする。負けた側は、敗北の証として触角をうしろに曲げて頭を下げたり、地面に押さえつけられたりもして、ひれ伏して、じっとしている。
 いやあ、なんだか、カッコよすぎるくらいにいさぎよい、ですね。
 女王アリは、働きアリのために姉妹を産ませる存在で、コロニーの主人は、実は働きアリだ。コロニーの活動は、女王の命令によって行われるているのではなく、働きアリたちによるものである。アリの社会は、君主制よりもむしろ社会主義に近いようだ。
 女王アリは昆虫のなかでもトップクラスの長寿で、平均でも10年で、20年以上も生きていた記録がある。女王アリが死ぬと、働きアリはオス卵を生産しはじめる。養育の限界が来るまでオスを生産し続け、交尾飛行に飛び立たせて、少しでも繁殖の成功を試みる。
 アリの多様な生態が分かる楽しい本でした。
 土曜日、小雨の降るなか日比谷公園を歩きました。園内の小さなレストランが2つとも貸し切りになって結婚披露パーティーがあっていました。みずみずしい新緑の息吹は心地よいものがあります。ミニ花壇に可愛いキンギョソウが並んで咲いていました。
(2008年2月刊。1400円+税)

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