弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年4月28日

ひきこもりの著者と生きる

社会

著者:安達俊子・尚男、出版社:高文研
 すごいですね、私にはとてもこんなことはできません。すごい、すごーい、なんとかして続けてほしいです。でも、本当に身体を大切にしてくださいね。何年も自宅に引きこもりの生活をしていた青年たちを受け入れる施設(ビバハウス)なのです。この本を読むと、その大変さが、ひしひしと伝わってきます。
 ビバハウスで生活する若者たちは、春はつらいと言います。なぜか?
 自然界が生気に満ちあふれている春が、自分たちにとっては一番つらい時期なんだ。
 では、一体、どんな若者たちなのでしょう?
 進学高校で陰湿ないじめにあい、2年の3学期で退学した。極度の対人恐怖症となって、7年間、自宅にひきこもっていた。
 風俗バーのマネージャーをやっていた。ストレスに耐えられなくなり自殺しようとした。 統合失調症として治療を受けている。
 10年ものあいだ自宅に引きこもっていた若者もやって来た。いやあ、大変な若者たちです。
 ビバハウスは、若者たちがいつまでも留まるところではない。ひと時、疲れた心と身体を休め、充電を図り、それぞれが目ざす道へと進む準備をする場所。それに要する時間は、さまざま。自分の目標が達成できたら、卒業できる。ビバハウスに滞在して3日間とか 1ヶ月で自分を取り戻した人もいる。だから、ビバハウスは出入りが激しい。
 日本語のひきこもりは、直訳英語の Social Withdrawal とは表現できない。きわめて日本社会に固有の現象である。
 ビバハウスでも、両親の離婚にかかわる若者たちを受け入れてきた。どの若者にも共通しているのは、仲の良い両親のもとで幸せな家庭の子どもとして育ちたかったというごく当たり前の願いだ。繊細で優しい彼らの多くは、親たちの不和の原因は、自分がほかの家庭の子どものように良い子ではなく、学校に行けなかったり、親の言うとおりにきちんと勉強ができないからではないかと不安を感じて育っている。両親に仲良くなってもらおうと、彼らの多くは自分の力以上にがんばって、ほとんどつぶれかかっているにもかかわらず、なお親への期待をもち続ける。その期待が現実に裏切られたときの彼らの心の闇の深さを真剣に大人は受け止める必要がある。
 うーん、これってすごく重たい指摘ですね。
 長く引きこもっている若者が、人と接触することに慣れてくると、話したくてしようがなくなる。そして、いろんなことを知りたがる。ちょうど、3、4歳児が、親に、「これ、なに?」「あれ、何?」と訊くのと同じ。
 長くひきこもっていると、筋肉が衰えてしまっている。椅子から立ち上がることもできない。
 散歩していると、周囲にいる人々の視線が目に刺さる。初めて列車に乗ったとき、まわりの視線を感じて、怖くて生きた心地がしなかったという。
 小樽水族館へみんなで見学に行ったとき、館内での見学のあと、イルカのショーをみてから、若者たちの表情が一変した。固く、何も言わない。帰りの車中は、お通夜のようになった。なぜか?
 同世代の大勢の幸せそうなカップルや子ども連れの若い夫婦に広い会場で出会い、ショックを受け、本当につらかった。輝いているあの人たちと比べ、現在の自分の惨めさをいやというほど味わわされた。あそこから逃げ出したかった。自分は、今いったい何をやっているのだろう、そう思うだけで自己嫌悪に落ち込んだ。
 日本全国に数十万人はいるだろうと言われている引きこもりの若者たちに、その立ち直りのきっかけを与えようとして奮闘努力中の施設の現状がよく分かります。あのヤンキー先生(なぜか、今では自民党の国会議員です・・・)を教えていた先生でもあります。すごい、すごいと思いながら読みすすめました。個人の善意と体力だけにまかせていいとは、とても思えません。ともかく、お体を大切にして、続けてくださいね。
(2008年1月刊。1600円+税)

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