弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年4月25日

先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます

生き物

著者:小林朋道、出版社:築地書館
 鳥取環境大学は5年前につくられた。学生数1200人。人と社会と自然の共生をめざす人材の育成が目標だ。そんな大学で学生を教えている著者による、大学周辺の環境と身近な動物たちとの楽しい格闘記です。豊かな自然に囲まれて、人間が自然の体系と調和しながら生きていくことの大切さを実感させてくれる素敵な大学だと思いました。
 タイトルは、大学の廊下をオヒキコウモリという珍しいコウモリが飛んでいるのを学生が発見したことによります。その事件で目覚めた著者は、近くの洞穴でキクガシラコウモリにも出会うことができました。
 自然界で、ある出来事が起こると、その出来事に関連した事象に対する脳の反応性が増大する。
 近くの森でヘビに出会い、ヘビの写真もとっています。子ヘビでした。その口の中に白い穴が見える。何か? 肺に通じる気管の入り口である。人間もふくめて他の動物では、ノドの奥に開いている気管入口が、ヘビでは口の中ほどに位置している。なぜか? それは、大きな獲物をゆっくり飲みこむとき、気管が塞がれて窒息することを避けるためだ。うむむ、なーるほど、そういうことだったのですか。それにしても奇妙な穴です。
 タヌキは、地面の餌を探しながら、いつも下ばかり向いて歩くので、前方の対象物に気づかないことが多い。そのときも、著者のすぐ近くに来るまで気がつかなかった。すぐ前で気がつき、著者と目が合うと、驚いて逃げていった。
 著者は小さな無人島に雌ジカが一人ぼっちで暮らしているのを発見します。愛着がわくと個別の名前をつけたくなる。それは、外部世界、とくに社会的な関係をしっかりと把握するための、人間万人に備わった脳の戦略だ。
 岡山県の山中でニホンザルの生態を調べていたとき、夕暮れどき山奥に帰っていくニホンザルを追いかけていた著者は、ホーッと出来るだけニホンザルの声に似せて鳴いてみた。すると、群れの前方を行く数匹のサルが声に答えて、ホーッと鳴いた。半信半疑でもう一回、鳴いてみた。同じように、また、鳴き返してくれた。サルも交信できるのですね。
 ドバトは、他の個体と一緒に群れをつくる特性を備えている。そこで、一人になるのは不安を感じる。著者に飼われていたドバトは、著者が見えないと不安そうにきょろきょろあたりを見まわし、見つけると急いで歩いてやってくる。ふむふむ、そうなんですか。
 ヤギは、社会的な順位を強く認識する動物である。なじみのない人に対しては、競争的、威圧的にふるまう。ところが、小さいころから親のように優しく厳しく接してきた著者に対しては、従順だった。ヤギの社会では、移動の際には、順位の高い個体から前を歩く。
 うひょう、そうなんですか、ちっとも知りませんでした。
 この本を読むと、動物を飼うことの大変さと素晴らしさを実感させてくれます。
 庭先のフェンスにからみついているクレマチスが花を咲かせてくれました。赤紫色の花です。ほかにも真紅の花や純白の花などが、これから咲いてくれるはずです。アスパラガスがやっと食べられそうなほどの太さになりました。早速、春の味をいただきました。このところ毎日タケノコを美味しくいただいています。きのう、誰かがコラムに子どものころ毎日毎日タケノコを食べていて、竹になってしまいそうと悲鳴をあげていたと書いていました。味噌煮のタケノコは鶏肉なんかとよく合いますよね。春らしい味です。
(2007年3月刊。1600円+税)

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