弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2008年1月15日

受けてみたフィンランドの教育

ヨーロッパ

著者:実川真由、出版社:文藝春秋
 はじめから私事ですが、私の娘と同じ名前なので、とても親近感を抱きながら読みました。高校生の娘を遠くフィンランドへ一人送り出すというのは親も本人も、とても不安だったと思います。でも、結果オーライでした。大変な自信がついたようです。よかったですね、まゆさん。ぜひ日本でも大いにがんばってください。
フィンランドの教育レベルは世界一です。といっても、先日、フィンランドでも、アメリカと同じように高校生が校内で銃を乱射して人を殺し、自分も自殺したという事件が起きてしまいました。どこの国でも、まったく問題がないというわけではないのですね。それでも、この本を読むと、日本の高校と違って生徒がとてものびのび自由に毎日を過ごしているのがよく伝わってきます。うらやましい限りです。
 フィンランドの学力は、読解、科学で世界1位、数学、問題解決能力で世界2位。日本は、読解力は14位、数学は6位。
 フィンランド経済は年5%のペースで成長している。
 フィンランドには塾も偏差値もまったくない。
 フィンランドの高校は、どのクラスも25人から30人。中高一貫の高校は珍しくない。
 フィンランドの学校は基本的にすべてタダ。学費はタダだし、学校での昼食と軽食もタダ。ただし、おいしくない。大学はすべて国立。学生は毎月、国から奨学金を受ける。寮に入れば、寮費もタダ。塾はないし、高校は単位制。
 フィンランドでは、高校を卒業してすぐに大学に進学する人は少数派である。何年か働いたり、外国を放浪したり、ボランティアをしたり、兵役にいったりして、20歳を過ぎたころに、大学に行くことを考える。これって、いいですよね。自分の生き方、そして人生についてゆっくりじっくり考えることができます。私の娘も何回となく外国に出かけましたが、まだまだ考える時間が必要のようです。やはり、人生にはゆとりが欠かせません。
 フィンランドのテストは、ほとんど作文(エッセイ)。英語・国語はもちろん、化学、生物、音楽までもエッセイ。つまり、自分の考えを文章にして書かせるのが一般的なテスト。フィンランドでは穴埋め問題などなくて、すべて記述式。テストには時間制限がない。テストの前、生徒たちはやたら分厚い本をかかえていて、それを読んで、知識を詰め込む。
 フィンランドの教育の質の高いのは、教師の質が高いことと、義務教育を9年一貫制にしたことによるという。フィンランドでは、教師は絶対に尊敬される職業である。
 教師は、授業中にふざけたり、しゃべったりする生徒がいると、何もいわずにドアを開けて「どうぞ」と言って外に出す。あとで、その生徒を呼び出して怒ることもない。
 うむむ、これはすごいですね。日本でも、もっと教師は大切にされるべきです。
 フィンランド人は暗算をしようとしない。フィンランド人は520万人。日本よりやや狭い面積。医療と教育に手厚いサービスがある。そして、地域コミュニティが機能している。地域のみんなが顔見知りで、挨拶しあう。友だちづきあいは一生続く。
 フィンランドの不動産は日本並みに高い。外食やショッピングをせず、家でごはんをつくって家族で食べて、庭いじりやインテリアを手作りで楽しめば、お金はそれほどかからない。スラムもない。
 フィンランド語は、書き言葉と話し言葉がかなり違う。メールは話し言葉で書く。フィンランド語は、ウラル語族に属していて、ハンガリー語と並んでヨーロッパでは特殊な言語である。フィンランドには、ぜひ一度行ってみたいと思っています。
(2007年9月刊。1524円+税)

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