弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年12月14日

真犯人

社会

著者:森下香枝、出版社:朝日新聞社
 「週刊朝日」に今年3月に連載されていた記事をもとに書きおろした本です。グリコ・森永事件の犯人と5億4000万円強奪事件の犯人は同じだというのが著者の考えです。その真偽のほどは分かりませんが、犯人不明のまま幕引きとなったグリコ・森永事件を改めて考え直すことができました。
 5億4000億円強奪事件というのは、日本では史上最大の銀行強盗事件です。   1994年(平成6年)8月5日午前9時20分、神戸市にある福徳銀行神戸支店から5億4000万円が強奪された。
 そして、この事件は、時効が成立した。ところが、その犯人は、本年2月に、同じように銀行強盗しようとして捕まった。犯人には、韓国人女性の愛人がいた。女性は時効が成立したあと、ホテルを現金で買収した。もう一人の犯人は、自殺している。
 グリコ事件が起きたのは、昭和59年(1984年)3月18日のこと。江崎勝久社長が子どもたち2人と風呂に入っていたところを犯人に連行された。江崎社長が監禁されたのは新大阪駅から遠くない水防倉庫。
 グリコ事件の犯人の一人、キツネ目の男は大阪府警捜査一課に属する7人の特殊犯罪捜査員に目撃されたが、結局、16年にも及んだ捜査もむなしく時効を迎えた。捜査員がキツネ目の男を目撃したのは、京都駅でのこと。
 このあとも警察は、大失態をくり返した。丸大事件のとき、キツネ目の男はハウス事件の現場に2度も出没したが、みすみす見逃した。
 滋賀県警は、現金投下場所のすぐ近くにとまっていた不審者を職務質問しておきながら取り逃がした。この失態の責任を感じた滋賀県警本部長は昭和60年8月7日、定年退職した日に本部長公舎で焼身自殺した。
 この本は、5億4000万円事件の犯人とグリコ・森永事件の犯人は同一人物であり、その犯人は10年前に警察が容疑不十分で釈放した翌朝、自殺した、としています。
 かい人21面相の挑戦状を久しぶりに読みましたが、警察の内情もそれなりにつかんだ文面なので、どうやってこんな情報を得ていたのか、改めて疑問に思いました。
 ともかく、この世は不思議なことだらけです。
 それにしても5億円も強奪した犯人たちは幸せな生活は過ごせなかったようです。やはり、人生はお金だけではないとつくづく思ったことでした。
(2007年9月刊。1300円+税)

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