弁護士会の読書

※本欄の記述はあくまで会員の個人的意見です。

2007年11月 7日

暴走老人

社会

著者:藤原智美、出版社:文藝春秋
 成熟した高齢者が中心の社会になれば、時間はゆったり、のんびり流れるだろう。社会をとりまく空気も穏やかでゆとりのあるものになり、ぎすぎすした雰囲気は消えるかもしれない。漠然と、そう考えていた。しかし、現実は違う。穏やかな社会というのは大いなる幻影ではないか、むしろ私たちが進もうとしているのは、今まで以上にストレスのかかる高齢化社会ではないのだろうか。
 残念ながら、そのようです。私は、後期高齢者に医療費を負担させようとする今回の政府の施策は根本的に間違っていると思います。75歳になったら、医療費を全部タダにして、死ぬまで安心してゆっくり、のんびりお過ごしください。このように言うのが政治の責務というものではありませんか。軍事予算にまわすお金はあっても、老人福祉にまわすお金はないなんて、まったく政治が間違っています。
 お年寄りを大切にしないどころか、あからさまに早く死ねと言わんばかりの政治がすすめられています。だから、キレて叫ぶ老人が頻出するのは、ある意味で当然です。誰だって、無視されたくはありません。大事にしてもらいたいのです。お金がなければ虫ケラのように扱われる。そんな日本に誰がしたのでしょうか。プンプンプン、私だって怒ります。
 若者による殺人などの凶悪事件は、1958年をピークに減少し、現在、ピーク時より圧倒的に少ない。反対に、「いい歳をした」危ない大人が増えている。2005年、刑法犯で検挙された者のうち、65歳以上が4万7000人。1989年に9600人だったので、わずか 16年間で、5倍にも増えてしまった。ちなみに、この間の高齢者人口の増加は2倍。
 60歳以上でみると、2000年から2005年までの6年間で、刑法犯は4万人から7万5000人へ、1.8倍も増えている。
 老人が暴走する原因は、社会の情報化にスムースに適応できないことにある。病院で、突然キレて暴力をふるう患者が10年前から増えている。1年間に看護師の55%が何らかの暴力被害にあっている。仕事をしていて暴力を受ける確率が半分以上という職場は、ほかに考えられない。ひゃあ、知りませんでした。大変なことですよね、これって・・・。
 歳をとるごとに時間が早くたつと感じる理由は、高齢者のほうが子どもより体内時計のすすみ方が遅いから。体内時計が遅いと、現実の時間は早く感じられる。逆に子どもは体内時計が早くすすむため、現実の時間を遅く感じる。この体内時計は代謝の速さに対応している。それは酸素消費量による。それが少なければ、体内時計の進行は遅い。消費量が多ければ、速い。この消費量は脈拍数から推測できる。高齢者の脈拍数は毎分50、子どもは70。この差が体内時計の差になる。
 ふむふむ、なるほど、そういうことなんですか。本当に月日のたつのは早いものです。このあいだまで暑い暑いと言っていましたが、いつのまにやら寒さを感じるようになり、今年も残すところ2ヶ月ないというのですからね。私も来年には還暦を迎えます。ええーっ、と我ながら驚いてしまいました。
 現代の権力とは、時間をコントロールする力のこと。現代の権力とは、まさに時間を私物化すること。時給、月給、年俸と、収入が時間の単位で計算されるのも、時間のコントロールこそが現代人の最大のテーマになっているから。
 いま、地域が抱える大きな問題の一つに、全国各地に誕生しているゴミ屋敷。この住人の大半は独居老人である。マンションのなかにも、ゴミ・マンションが存在する。
 いやあ、キレる老人がこんなにも増えているのかと、今さらながら驚きました。それにしても、私自身が老人と呼ばれる年齢になりつつある今、なぜ老人がキレやすいのか、社会はもっと老人を大切にすべきだと、声を大にして叫びたいと思います。
 年金額を増やせ、医療費をタダにしろ。どうですか、みなさん。ご一緒に叫び声を上げましょう。
 先週の土曜日に天竜川下りをしました。おだやかな秋晴れの下で、小一時間ほど、ゆっくり広々とした天竜川に下っていきました。シラサギやアオサギが川辺にじっと立って小魚をとらえて食べる場面にも遭遇しました。飛ぶ宝石とも言われる鮮やかに青いカワセミ、黄色の目立つ可愛らしいキセキレイの姿も見かけました。柳川の川下りも情緒がありますが、天竜川下りもいいものです。徳川家康ゆかりの二俣城跡も川沿いにありました。川の中、時間はゆったり、のんびり過ぎていき、しばし心の洗濯ができました。名古屋の成田清弁護士のおかげです。お礼を申し上げます。
(2007年8月刊。1000円+税)

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